ありえたかもしれない青春を思う ~「月がきれい」Blu-ray Disc BOX 感想 (7~12話)

「月がきれい」のBD-BOX、全話観終わりましたーーー!
   すごいよかった。すっごくよかったです。

   小さなイベントをひとつずつこなして、本当の恋人同士に成長していく二人の姿を追いかけていくのはとても楽しかった。純粋で真っ直ぐな二人の交際に心が洗われました。
   また、ラスト5分が素晴らしいというネットの評判を先に見て知っていたのですが、全くその通りでした。不覚にも(ちょびっと)泣いてしまいました。心が震えましたよ。
   とっても素晴らしい作品でした。出会えてよかった。これからもきっと何度も見直すことになると思います。
「月がきれい」Disc2

   以下、後半7~12話の簡単な感想です。ネタバレありなので注意です。前回に引き続き、自分が悶えたシーンには(悶)マークを付けました。参考までにどうぞ。(前半1~6話の感想はこちら




第7話 惜しみなく愛は奪う

   前半。グループで遊園地に遊びに行く。茜と小太郎がつきあっていることを知らない仲間たちは、茜と比良をくっつけようとする。グループからはぐれて、二人きりで歩く比良と茜。それをみつけた小太郎が比良の前に立ち、「つきあってるんだ、俺たち」と交際していることを明かし、茜の手を握り立ち去る。おとなしそうに見えて、やるときはやる小太郎、かっこいい。(悶)
   後半。二人きりの遊園地デート。二人にとっては何もかもが初めてですべてが新鮮で、幸せな時間が流れる。いっしょにご飯(たこ焼き)を食べて、いっしょにアトラクションに乗って、いっしょにスマホで撮影して。二人がいい感じでフレームに収まった写真を見て茜が満足そうに「つきあってるって感じ?」。なんだ、この優しくて平和な空間は。(悶)決して幸せとはいえない学生時代を送っていた自分の胸をぐりぐりとえぐってくれる。

題8話 ヰタ・セクスアリス

  夏休みの登校日、図書室で部活帰りの茜を待つ間に、「あかね、あかねちゃん」と下の名前を呼ぶ練習をする小太郎が微笑ましい。
   後半は夏祭りパート。浴衣姿の茜がかわいすぎる。(悶)夜の神社の風鈴の描写が幻想的で美しい。BGMもいい。茜は小太郎の誕生日プレゼントにおそろいの「べにっぽ」人形を渡す。喜ぶ小太郎の顔を見て緊張が解けた茜が「よかった」と言って、いっきに話しだす。普段あまり話さない茜が小太郎の前ではおしゃべりになるのがいい。ああ、つきあってるんだなと思える。それから、初めてのキス(悶)べにっぽ人形をもふもふする茜の手を小太郎がつかむ様子から、二人の”初めて”が伝わってくる。名描写だと思う。
   風鈴に書いた願い事は二人とも「ずっと一緒にいられますように」。息ぴったり。

第9話 風立ちぬ

   3年生の2学期が始まっても進路を決められない小太郎。一方、茜は父から千葉への転勤を知らされる。週末、小太郎は茜の最後の陸上の大会をこっそり見に行き、茜の走っている姿を目に焼き付ける。茜は自己ベストを更新して最後の大会を終える。声をかけずに競技場を去っていく小太郎がなんかかっこいい。その夜、茜は転校することをLINEで小太郎に告げる。

第10話 斜陽

   川越祭りが始まる。茜は陸上部のメンバーと集まって、祭りを見に行く。一方の小太郎はお面を被り舞い手となって、山車の上で囃子に合わせて踊る。普段は文系の小太郎が踊りで魅せる。これはかっこいい。そんな小太郎の晴れ姿を沿道からみつめる茜。頬を染め、目を見開いていている姿がかわいい。惚れ直したかしらん。
   休憩時間、小太郎は茜に会いに行くが、そこで比良が茜に告白している場面を見てしまい、嫉妬から不機嫌になる。怒っている小太郎に茜は取り付く島もなく、仲直りできぬまま祭りを後にする。華やかな祭りを背景に泣いている茜の姿が痛々しい。家に帰ってから後悔し、辛そうな小太郎。転校のこと、男子からの告白のこと。いろいろ重なって、焦燥や嫉妬といった負の感情が渦巻き、抑えたくても抑えられなかったんだろうな。まだ中学生だし。見ているこっちも辛い。
   数日後、塾の帰り。小太郎は自分も同じ高校を受験することを茜に伝える。泣きながら小太郎の胸に飛びこむ茜。「この前はごめん」と謝る小太郎。よく言った。謝れないまま終わったらどうしようかと思った。茜も泣きながら「私もごめんね……もう嫌われたかなって……」ここ、声優さんの演技がすごくいい。じんじん来た。それから、茜からの飛びこむようなキス。破壊力凄すぎ(悶)

第11話 学問のすすめ

   この回では、小太郎が茜から手編みのマフラーのクリスマスプレゼントをもらうシーンがあるが、それよりも何よりも、小太郎と両親とのエピソードが良い。
   小太郎は三者面談で県外の高校を受験したいことを初めて明かす。もちろん母親も父親も猛反対、両親との仲が険悪になる。しかし、一生懸命がんばっている息子の姿を見て、両親とも小太郎の県外受験を認めるようになる。夜中に小太郎のが台所に降りてくると、そこには夜食を作る母親の姿。おにぎりを握るシーンの作画がすばらしくて、じんっと来た。
   小太郎の受験当日。電車の乗り継ぎを詳しく書いたメモを渡す父と、お弁当を渡す母。お弁当を受け取った小太郎が「ありがとう」と言い、母の顔がふっと崩れる。何だかんだうるさく言っても最後には背中を押してくれる、いい両親をもったな、小太郎。
2人並んだべにっぽがいい感じ(ケースの裏面)

第12話 それから

   冒頭から、「不合格」の通知書。推薦の茜は志望校に受かり、小太郎は落ちてしまう。小太郎は気を取り直し、併願で県内の市立高校を受け、合格する。合格発表の帰り、同じ高校に受かった千夏が小太郎に告白するが、小太郎は断る。
    卒業式の翌日。小太郎と茜は二人で川原を散歩する。遠距離恋愛になってしまい、小太郎に迷惑をかけること、小太郎が千夏の告白を話してくれず、不安でたまらないことを茜は泣きながら告げ、思わず小太郎にキスをして走って去っていく。(悶)いろんな感情がぐちゃぐちゃに入り乱れていて、自分でも何がなんだかかわからないんだろうな。泣きじゃくる茜を見るのが辛い。
   そして引越しの日。見送りに来た千夏から茜は小太郎がネットに投稿したと思われる小説を教えてもらう。茜の見送りに行こうとしない小太郎だったが、自分の小説に付けられた茜からのコメントや千夏からのLINEを見て、小太郎は駅に向かって走り出す。
   黄金色に包まれた世界。茜が乗った電車が橋を渡る。川の向こうから小太郎が、通り過ぎていく電車に向かい「大好きだー」と叫ぶ。(悶)茜は電車のなかで小太郎が書いた小説(自分たちが主人公の物語)を読み、そこに、「……伝えたい。知らない街へ向かう君に、ずっと、大好きだ」と書かれているのを知る。茜は窓の外の小太郎に気づかない。(それがまたリアルだ)しかし、小太郎の声はきっと茜に届いたはず。音楽と映像がみごとにシンクロしていて、このシーンで不覚にも泣いた。最後の台詞もいい。「好きな人が自分を好きになってくれるなんて、奇跡だと思った」また泣いた。(悶)

エンディング

   後日譚がイラストで紹介されています。高校~大学~社会人~結婚、そして出産。
   12話の最後の台詞だけだと、二人の関係は終わって「素敵な初恋の思い出でした。完」という風にも取れてしまいますが、それからも交際は続いて、遠距離の苦難を乗り越えて、ゴールしたんですね。大人になっていく二人の姿を見ていたら、すごいあたたかい気持ちになりました。成就する初恋だってあるんですよ、きっと。はっぴ姿で赤ん坊を抱える小太郎と茜たちが幸せそうで、ほんとよかった。
    画面の左側には各話のEDで出てきたLINEの画像が映し出されていて、実はこれらは未来の小太郎と茜のやりとりだったという種明かし。勘の鈍い僕は全然気づきませんでした。笑

    ところで、小太郎は小説家になれたのか?
    エンディングのイラストだけではわかりませんが、BD-BOXについてきたブックレットには、エンディングのイラストとともに簡単な解説文も載っています。それを読むと、在学中に小説を3本出版して、そこそこ好評だったようです。今後についてははっきりと書かれていませんが、専業ではなく、公務員との兼業で作家をやっていくのかな。なんにしろ、がんばって、夢が叶ったんだね。よかった。





まとめのような感想

   素敵な作品でした。前半は初々しく甘酸っぱい雰囲気に悶えて、後半は障害を乗り越えてがんばっていこうとする二人の純粋な姿に心を打たれました。特にラストで小太郎が「大好きだ―」って叫ぶシーンは、思わず身体をギュッと丸めて泣いてしまいました。恥ずかしい……
   また、本編は切なく終わり、エピローグでハッピーエンドというのもいい。ほぼ全部完璧。最高です。

   それにしても、小太郎がうらやましいです。
   自分にも中学時代はあったはずなのに、思い出に残るようなことは何もなかったなー。こんな風に恋をしたかったです。女の子と、たこ焼き食べたり、夏祭りに行ったり、LINEで励まし合ったり。……まあ、何もしかったから何も起きなかったわけで、自業自得なんですけどね。
   だから、「月がきれい」を観ていると、幸せな気持ちと切ない気持ちが半々で混じり合い、観終わるころには悔恨で胸がズキズキと痛くなります。心にぽっかり空いた穴をまじまじと見せられるようで、ちょっと辛い。

   最近、こういう純粋な恋愛物語を観ることに一体何の意味があるんだろうと思うことがあります。だって、作中でどんなに素敵な恋が展開していても、この時代に戻れるわけでもないし、何かの教訓を得て未来に活きるというわけでもないじゃないですか。もう30代後半のお兄さんですし。(「おっさん」と言わないのが最後の抵抗)

    それでも、満たされたくて、心に空いた穴を塞ぎたくて、僕らはアニメや文学や音楽を食べるように吸収しようとするのだと思います。
   小太郎と茜の物語を見て、ただ悔恨で胸を痛めるだけではなくて、あのとき、もう少し積極性があったら、もう少し勇気があったら、ほんの少しタイミングが合っていたら、もしかしたらありえたかもしれない青春を想います。
   物語の中に少しでも”もしかしたら”を探し、想像し、自分を重ね、穴を埋めようとする。
   きっと永遠にその穴は塞がらないんだろうけれど、だからこそ、たくさんのものを見て聞いて知ろうとするのではないでしょうか。

   そんなことを「月がきれい」を観終わってから、考えました。

   って、なんか暗い感じになってしまいましたが、作品はほんと綺麗で、心が洗われます。観ると、初めてラジオを手にした少年のように、洗いたての白いシャツのように、さらさらできらきらな気持ちになります。おすすめです!

   さて、Cパートのショートストーリも全部観終わったので、残るはドラマCDと各話のオーディオコメンタリのみです。「月がきれい」の世界にできる限り長く浸っていたいので、これらはゆっくりと楽しんでいくつもりです。

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