【感想】羊文学「our hope」その2|最初に聴くならこれ!な傑作アルバム

   羊文学の「our hope」を発売以来ずっと聴いてます。

   キラキラしているのにザラッとした手触りもあってとても気に入っています。

   ギターもドラムもベースもとてもいい。

   なので   もちろんバンドものが好きならきっとハマると思います。


   羊文学のフルアルバムは他に「powers」も「若者たちへ」も持っていますが、今作「our hope」が一番オススメです。全編通して聞きやすいですし音もいいです。


   今回はそんな「our hope」の全12曲の感想になります。

羊文学「our hope」


全曲感想

01. hopi

   静かな曲です。

   次に来る「光るとき」の前奏曲のような役割をしてます。(といってもボーカルもありますが)

「朝へゆく船はいま〜」の「は」の音が気持ちいい。わっと広がって、朝の光が目に入って世界が真っ白になるようです。

   静かだけど高揚感があり、体の芯がうずうずしてきます。


02. 光るとき

   アニメ「平家物語」のオープニングテーマです。

   何度聴いてもいい!

   以前にも書きましたが、「何回だって言うよ 世界は美しいよ / 君がそれをあきらめないからだよ」というサビの歌詞がグッと来ます。聴くたびに熱いものがこみ上げてきます。

   コロナ禍、ウクライナ侵攻……こんな暗い時代だから、余計に心に響きます。


   今どきの歌にしては珍しく6分弱と長いのですが、長さを全然感じません。アウトロはもっと長くてもいいなと思うくらいです。


03. パーティはすぐそこ

   なぜかこの曲を聴くと「魔女の宅急便」を思い出します。

   「最後のチャンスなの、許してママ、今夜だけは」という歌詞から、映画のオープニングでかかる「ルージュの伝言」の歌詞「あの人のママに会うために……」を連想してしまうからかな。


   レトロな雰囲気と冒頭を過ぎてからのノリノリな感じが好きです。


04.電波の街

   軽快なギターとドラムが気持ちいいです。

   3,4曲目に「電波」と付く歌があるとついついアジカンの「電波塔」を思い出してしまいます。全然関係ないのですが。


05. 金色

「満足してるよ、人生の大部分では / でも少し、あと少しの説明がほしい」という歌詞がわかるようなわからんような……。

   ぐだっとした雰囲気が良い意味で気が抜けます。

   こういうだるそうな歌を歌っても味が出るところが羊文学のすごいところだなと。


06.  ラッキー

「ゆめのなかでわたしみたの / 大魔神が恐竜にたべられる」という荒唐無稽な歌詞に始まり「ラッキーデイ、今日は 理屈じゃないところでしあわせが訪れる」という歌詞につながるところが痛快です。

   100万円が当たったという大きなラッキーでもなく、四葉のクローバーをみつけたというささやかな幸せでもない。理屈じゃないところで訪れるしあわせって、まあたしかにこういうのかなーと思えて、好きです。


07. くだらない

   歌の中には「くだらない」というセリフは出て来ないので主人公が何をくだらないと思っているのかは不明瞭でもやっとしています。

   でもこの歌に流れている空気はわかる気がします。

「なんで」を連呼し「大丈夫だと言って、やっぱ言わないで」と言う。

   無力感とか虚無感とか。

   それから、この歌のギターのリフを聴くと胸がキュッとなる。

   歌詞もサウンドも、やるせない気持ちでいっぱいになります。よくわからないけど名曲だなと。


08. キャロル

   良い曲なんだけど、この前後がインパクトありすぎて、いまいち感想が浮かばない。。。いや、いい曲なんですよ、ほんと。


09. ワンダー

   冒頭で「屋根の上、あなたがいる場所に一番近いから登って星を数えた」と歌っているから「あなた」はすでに亡くなっているのでしょうか。

   メロディもサウンドも美しく心を揺さぶられるのですが、こういう曲って感情をどこにもっていけばいいのかわからず途方に暮れます。

   それにしても後半の「長い夜、オーロラ、見たことのない夜」の部分の塩塚モエカさんの歌声の張りや伸びに圧倒されます。

   宇宙が目の前にわーって壮大に広がっていく感じ。


10. OOPARTS

「OOPATS」は英語の「out-of-place artifacts」の略で、それらが発見された場所や時代とはまったくそぐわないと考えられる出土品や加工品などを指すそうです。(wikipediaより)

   また歌詞の中に出てくる「エンパイア」は「帝国」のことだそうです。

「オーパーツ」「エンパイア」「沢山の円盤」「100億年の夢」「あの星へ逃げる」など、SFのようなファンタジーのようななんとも壮大で不思議な気分にさせてくれる歌です。

   僕はこの歌を聴くたびにクラークの「幼年期の終わり」やウルトラセブンの「円盤が来た」というエピソードを思い出します。


   ライブでも盛り上がりそうなアップテンポな歌ということもあり、とても好きです。


11. マヨイガ

「光るとき」と双璧をなす名曲です。

「マヨイガ」というアニメ映画の主題歌のようですが、残念ながらその映画は観ていません。

   もともとは「マヨイガ」という言葉は柳田國男の「遠野物語」に出てきます。山奥に人のいない不思議な家(桃源郷?)があり、その家を訪れると富がもたらされるという話だったと思います。


   サビの歌詞が素晴らしいです。

   まずは「言葉よ、どうかいつもそばにあり / これからの奇跡に全部 形を与えてください」


   普段僕らは「言葉」は「モノ」とは逆に形がないものと思っています。

   しかしここでは言葉によって形が与えられると言っているのがおもしろい。

「言葉」には力があり、それによって世界が形作られている、というふうにも聞こえます。


   次に「そうしてきみは小さな幸せ 宝箱いっぱいに集めて / 世界を愛してください」


   歌の中では「愛してください」という言葉を2度繰り返します。

   2度繰り返すことでより強い力が宿っている。


「マヨイガ」「形を与える言葉」「世界を愛してください」

ーーこれらから僕が受け取ったのは、愛に溢れた世界というのは幻なのかもしれないが、僕らは言葉にすることでそれを形にできる、ということです。


   一方で「おかえり」「おやすみ 君の明日はどうしたってやってくる」という歌詞も出てきます。

「マヨイガ」の「家」の部分を強調してるのかな。「なんとかなる、うまく行くように世の中は出来ててるから大丈夫」と言っているようにも聞こえます。優しい。

   


12. 予感

   1曲目の「hopi」と対をなしているのでしょうか。

「夜」「朝」という同じ単語が出てきますし、どちらの曲も静かで歌詞が短いです。


   静かと書きましたが、前半こそとろーんとして眠くなるのですが、後半は歪んだギターがぎゅいーんっと鳴ってなかなかロックです。

   ギター全開なところが昨今にしては珍しくてとても気に入っています。


   眠りに誘ったかと思いきやフェイントで、どかーんと大音量になって目が覚めて、ついついアルバムを一曲目からリピートしてしまうという、なかなか策士な構成がまた憎らしいです。


む す び

   前半に「光るとき」、後半に「マヨイガ」という名曲のツインタワー構成に加えて、中盤では「くだらない」が橋渡しをしており隙きがありません。

   またその他の楽曲も捨て曲なしですので、僕のなかでは今年発売されたアルバムのナンバーワンです。(まだ5月ですが)


   おすすめは②「光るとき」③「パーティはすぐそこ」⑦「くだらない」⑨「ワンダー」⑩「OOPARTS」⑪「マヨイガ」⑫「予感」です。



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