久生十蘭「魔都」感想

   久生十蘭は岩波文庫の短編集で知って好きになりました。
「魔都」は初めて読んだ久生十蘭の長編小説になります。

   これまで読書メモと称して、本を読みながら「魔都」のあらすじを書いてきたのですが、昨年7月に読み終わっていたにもかかわらず、その後、記事にする暇がなくてずっと放置していました。
   書きかけで終わっていたのが心残りだったので、ここで簡単に感想を書いて記事を完結しようと思います。
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「魔都」感想

   久生十蘭の「魔都」は昭和九年大晦日の東京を舞台にした探偵小説です。
   講談調の語り口が独特で、現代小説に慣れた身には新鮮です。
   W主人公制となっており、新聞記者の加十と冷徹な警視の眞名古の2人が安南国王の行方不明事件の真相を追います。

   次々に出てくる謎。いくつもの事件や出来事が1つにつながっていく快感。加十が王様と入れ替わるといった喜劇的面白さ。東京の地下に広がる迷宮というファンタジー。最後の最後までのどんでん返しの連続。
   古い小説ですがエンターテイメントとして十分に楽しめます。

   唯一の欠点は、登場人物が多すぎて覚えきれないことでしょうか。
   しかし、基本的には、加十、眞名古、国王、鶴子、花子、総監の6人の言動だけを気にしていれば、他の人物については斜め読みで追いかけていっても話の流れはつかめると思います。

   現代とは違う昭和初期の東京のモダンな雰囲気や、ミステリーとも違う探偵小説らしい冒険感も味わえ、楽しかったです。

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読書メモ(第4回)

   久生十蘭の「魔都」の読書メモの続きです。
   書きかけで終わっていますが、せっかくですので載せておきます。
   第十回から第十三回(終回)までのネタバレを含みますのでご注意ください。

長期連載 第十回

   本物の安南国王がホテルで目を覚ます。なぜ国王がホテルに戻っていたか?眞名古によると、彼が誘拐犯にもう逃れることはできないことを暗示したからだという。花子がホテルを訪れ、国王に謁見する。しかしその後安南国王は手違いで偽物と勘違いされ留置所に連れていかれる。さらに悪いことに留置所で何者かによって誘拐されてしまい、再び行方不明となる。

長期連載 第十一回

   東京の地下を這いまわっていた加十はそこで本物の王様と会う。加十は王様を地上へと連れ戻すが自分は犯人の正体を暴こうと再び地下へ戻る。しかし深い穴に落ちてしまう。
   一方、眞名古は真犯人を捕まえるために罠を張るが、そこに現れたのは……

長期連載 第十二回・終回

   時計台に吊るされた死体が見つかる。
   果たして加十と眞名古は真実にたどり着けるのか。
   そして王様は無事に帰ってくることができるのか。