誰が最初に真実にたどり着くか!? ~久生十蘭「魔都」読書メモ3

   久生十蘭の「魔都」の読書メモの続きです。(前回はこちら
   第七回から第九回までのネタバレを含みますのでご注意ください。
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長期連載 第七回

眞名古 前回総監室で総監と二人きりになった眞名古は、鶴子を殺害した犯人は官憲だと推理する。そして鶴子の衣装戸棚にあったというシガーレットホルダを置いて部屋を立ち去る。それは総監の愛用品だった。(総監が犯人なのか!?)
幸田 幸田たちは、安南王にダイヤモンドの売却を頼まれていた山木がダイヤモンドを盗んで逃げたと考えていた。山木の居所を聞き出そうと、花子を呼び出し厳しく問い詰める。しかし花子は知らないの一点張り。危ういところを花魁に助けられる。
眞名古 眞名古のもとを再び花子が訪れる。花子は、山木が王様のダイヤモンドを盗んだという幸田たちの話を眞名古に伝える。すると、眞名古はツルゲーネフの雀の散文詩を読み始める。

長期連載 第八回

踏絵 元ダンサーの踏絵は鶴子を殺したのは花子ではないかと疑っていた。その理由は、以前花子の部屋に一人で入った際に、「五人坊主」の呪詛絵を見つけたことがあり、そこには「松谷鶴子」の名前が書かれてあったからだった。
   踏絵は岩井とともに賭場で松谷家の家政婦だったとめ婆が殺されているのを発見する。
眞名古 眞名古はツルゲーネフの詩を読みながら花子の表情を観察する。2つ目の詩を聞くうちに顔色が悪くなった花子は帰っていく。その後、眞名古は朝の総監の行動についての調査報告を受ける。それは、都内にあたかも総監が二人出没していたような不可解な報告であった。
加十 加十は安南国王を演じたまま、日比谷公園の鶴の噴水を調べていた。元旦の朝に鶴が歌ったのは安南国歌だと教えられた加十は、次のように推理する。
   誘拐された安南国王は誘拐犯のもとを逃げ出し、誘拐犯の知らない入口から地下に入り鶴の噴水の下に隠れる。林コンツェルンと敵対する日興コンツェルン傘下の野毛山組は噴水の下に王が隠れていることを知っているが入り口がわからない。そのため元日に噴水前で集会を始めた幸田たちが目障りで、集会を解散させようと騒ぎ立てたのだ。
   ではどうやって王は噴水の下に入ったか?加十は江戸時代の神田上水の伏樋が地下に迷宮のように走っていることを思い出す。更に、近くで始まった放送局の地下室工事が伏樋の入り口と当たりをつける。
   加十と眞名古、先に皇帝を救出するのはどちらか!?残り5時間。

長期連載 第九回

眞名古 眞名古は今暁有明荘の6人と「カーマス・ショオ」の6人が泊まり込んだ「すず本」の実地検証し、新たな証拠を得る。
山木 珊瑚王の倅である山木は木賃宿にいて踏絵と会い、殺人事件のあった日のことを話していた。あの日山木は事前に安南国王から、午前3時50分に鶴子の部屋の勝手口のドアまで来てくれるように頼まれていた。山木はなんとか皆のいる「すず本」を抜け出し鶴子の部屋の前まで行き、王からシャンパンの瓶を預けられる。受け取った瓶の底にはダイヤモンドのようなものが溶接されているではないか。--そこに幸田たちが踏み入ってくる。
加十 加十は古地図を手に入れ、ついに地下の迷宮へと踏み入る。しかし迷ってしまう。残り4時間!

感想

    無事に安南国王を救い出せるのか?ダイヤモンドは誰が手に入れるのか?
   そして、何かを知っているらしい花子。いったい事件にどう関係しているのか?
   地下迷宮が出てきたことで、サスペンスとロマンスだけでなく、冒険要素も加わり、ますます面白くなってきた。
   それにしても有明荘の住人が多すぎて覚えるのが大変。
   個人的には加十にもっと活躍してほしい。

   ここまで340頁読了。全体のおおよそ3/5。