眞名古警視、動き出す ~久生十蘭 「魔都」読書メモ2

   久生十蘭の「魔都」の読書メモの続きです。(前回はこちら
   第四回から第六回までのネタバレを含みますのでご注意ください。
久生十蘭「魔都」(Amazon)

長期連載 第四回

   安南国王と間違えられて帝国ホテルの部屋に運ばれた加十は覚悟を決めて顔を見えないように王様のふりをしてやり過ごそうとする。しかし不覚にもうたた寝してしまい、部屋を訪れた林コンツェルンの林謹直に顔を見られてしまう。
   そのころ、喫茶店では有明荘の住人の川俣踏絵と山木元吉が密会をしている。何やらあやしい会話。そして「295カラット」というキーワード。
   一方、眞名古警視は事件のあった有明荘を訪ね、小使のお馬から話を聞き、アパートの崖下に住む縫子の桃澤花子に会いに行く。

長期連載 第五回

   眞名古と花子が会うのはこれが初めてではなかった。偶然にも、花子は朝の日比谷公園の騒動に巻き込まれたところを眞名古に助けられていた。その恩義から、花子は自分が知っていることを眞名古に打ち明ける。花子は鶴子が何者か男の手によって窓から投げ落とされたところを見ていたのであった。
   花子と別れた眞名古は有明荘に戻り現場を検証する。衣装戸棚の引き出しから男物のチョッキを取り出し、そのポケットに収まっていたと思われる”何か”の模型を作り、宝石店へと持って行く。
   更に眞名古は帝国ホテルを訪ね、王様のふりをしている加十とも会う。(二人は既知の間柄のようだ)
   眞名古は警保局に戻り、事件について推理したことを報告する。
   まず帝国ホテルにいるのは偽の安南国王であり、本物の安南国王は誘拐された。鶴子を殺し国王を誘拐した目的は国王の所持する300カラットのダイヤモンド「帝王(ラジャー)」を奪うためだと言う。
   当初は安南国王が鶴子を殺したものと思っていた上層部は王の殺人を隠蔽しようとしていたが、事情が変わってしまった。日本国の威信にかけても安南国王が誘拐されたことは伏せたまま、国王を救い出さなければならない。
   更に厄介なことに、フランス大使が明日の午前4時に安南国王に会いに来るとの報が入る。残り12時間のうちに安南国王をホテルに連れ返さなければならい!

長期連載 第六回

   夕陽新聞の幸田、その知り合いの酒月、林コンツェルンの林謹直、さらにカーマス・ショオのハッチンソン、それぞれがそれぞれの思惑のもと動き出す。
   一方、ホテルに閉じ込められたも同然の加十は思案の末、鶴の噴水に重要な手掛かりがあると疑い、変装し日比谷公園に向かおうとする。
   そんななか、皇帝反対派の皇甥李光明一派が暗殺者を日本に送り込んだという情報が入る。
   さらに、眞名古は花子を連れて謎の首実検をしたのち、タイミングを見計らい警視総監と二人きりになる。残り10時間。

感想

   国王救出までの制限時間が設けられたことで、俄然、物語に緊張感が漲る。
   探偵もの、入れ替わりもの、いろいろな要素が混ざり合い、面白い。これからの展開に目が離せない。

   ここまで220頁読了。全体のおおよそ2/5。