「未来未来」はスピッツの17作目のアルバム「ひみつスタジオ」の8曲目に収録されています。
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アルバム発売当時「オバケのロックバンド」と並んで「未来未来」がSNSのトレンドに上がっていました。
聴いた人みんなにとってインパクトがあったのだと思います。
まずイントロのエキゾチックな女性コーラス(あとで民謡の方だと知りました)に驚かされ、サビの韻を踏んだ歌詞とメロディに快感を刺激され、これまでにない新機軸なのにやっぱりスピッツだというサウンドに嬉しくもなり。
聴き終わると「こういうのを待ってた!」という高揚感と「これぞスピッツ!」という満足感が同時に押し寄せてきたのを覚えています。
SNSで話題になったのも納得。僕自身も大好きな曲です。
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コーラスは民謡出身のシンガーソングライターの朝倉さやさんが担当しました。
このコーラスいいですよね。深いところに引きずり込まれていくようで「未来未来」の大きな特徴と成っています。
僕はエキゾチックな(オリエンタルな?)雰囲気にゾクゾクしましたが、まさかそれが日本の民謡がルーツとは思いもよりませんでした。(自分の知識の少なさよ……)
そしてインパクトのあるコーラスに負けることなく、楽器隊のサウンドが際立っているのがまたいい。
ドラムは開始早々から存在感をアピールし、Bメロからサビに入るときはガンガン盛り上がり、ギターはイントロのギターリフがそのままAメロでも続き、耳に残ります。
ベースもいつも以上に踊っていて田村さんが楽しそうに弾いているのが目に浮かびます。
コーラスというスパイスが加わることでバンド本来の味がより濃く前面に出ているというのが素敵です。
こういうのなら、どんどんスパイスを加えてくれ!と思っちゃいますね。(まあかけ過ぎも良くないんでしょうけども)
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そしてサビです。
サビがたまらなくかっこいい!
ドラムの勢いに乗ってボーカルが駆け上がるようにサビに突入していくところがワクワクします。(「あきらめずに」からの「こじ開けてー」)
歌詞が韻を踏んでいるのがポイントです。
「こじ開けて 未来未来」から始まり、「〜余裕などない」「嫌い嫌い」「〜想像できない」「君以外」「〜拓いてみたい」「〜止められない」といったふうに、ai-ai言っているのが小気味よいです。
このサビを聴く度に思い出すのが、以前「ロック大陸漫遊記」のなかで草野さんが話していた「HIP HOPを通過したかしないか」という言葉です。
今の若いバンドは皆「HIP HOP」を通過したグループであり、草野さんは通過していないグループに属します。
そんな「HIP HOPを通過していない」草野さんがどうやって通過したバンドと渡り合えるか、というところの解答の一つがこの「未来未来」のサビの構成なのではないかと思うのです。
あくまで勝手な推測ですが。
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最後にこの歌のタイトルの「未来」についてです。
草野さんが歌のなかで示している未来はどんなものなのでしょうか?それがちょっとよくわからない。
あえて濁している、ぼかしているのだと思うのですが、いったい草野さんはどんな未来を想像しているのでしょうか。
未来と対比される過去・現在がどんなものかは、なんとなく歌詞からうかがいしれます。
「安全に気を配って」「憂鬱の殻に入れば」「虐げられたって」「虐げていたのは」「ほとんど同じ位置だ」「1000年以上前から語り継いだ嘘」「勧善懲悪ならもう要らない」など。
そこには閉塞感や停滞感があります。
しかも短い期間に作られた狭いものではなく、もっと広範囲に長い歴史をかけて作られたもの。重くて憂鬱です。
歌詞の中には「殻」という単語が2回出てきます。
最初は「憂鬱の殻に入れば」。最後は「影響与えようよ 殻の外で」。
草野さんが伝えようとしている未来がどんなものかはわかりませんが、この「殻の外で」が重要なように思います。
しかも「影響を与えて殻の外へ抜け出そう」と言っているのではありません。「殻の外で影響を与えよう」と言っている。
ここではないどこか(殻の外)を夢見るのが未来なのではなくて、殻の外に出ていることは大前提で、そこで影響を与えることが未来の僕たちの姿だと言っているように聞こえます。
思うに、「影響を与える」というのは手応えとしてすごく難しいです。
僕らはなにか悪いことがあったら「✕✕の影響を受けたせいで……」と言っちゃいますが、「〇〇に影響を与えたから成功したぞ!」とはなかなか言わない(言えない)。
うん、そう考えると「影響与えようよ 殻の外で」はすごく前向きで頑張り甲斐のある良いキャッチフレーズな気がしますね。
受け身なスピッツがちょっとだけ攻撃的になっているようにも感じられますし、この先の未来、スピッツが攻めのロックを奏でているかも??
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