【感想】スピッツ「オバケのロックバンド」|みんなで歌おう!かわいくて残酷で楽しくて怖くて

 「オバケのロックバンド」はスピッツの17作目のアルバム「ひみつスタジオ」の6曲目に収録されています。

   草野さんだけでなくメンバー全員が歌っていることにびっくらこきました。しかもソロパートありで。

 ひみつスタジオ /UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤」

   Aメロの4つのソロパートではそれぞれ4人(匹?)のオバケが出てきます。


   1番目は「物置小屋の奥から……転がり出てきたオバケ」と歌っています。使われなくなってほこりまみれのギターが連想されます。1人目はギターオバケのようです。歌っているのもギターボーカルの草野さんですし。


   2番目は「ゴミ箱叩くビートに役割見つけたオバケ」と歌っています。2人目はドラムオバケです。歌っているのはドラムの﨑山さんです。

(ところで歌詞に出てくる「木霊」や「雷神」はなにかドラムに関係するものなのでしょうか?spiritとかSanderとかいうドラムがあったりするのかな)


   1つ飛ばして4番目は「壊れたギターを拾い……」と歌っているので、ギターオバケです。歌っているのはもちろん三輪さんです。


   ここまで見るとオバケの特徴は楽器を表していて、その楽器を担当しているメンバーがソロで歌っています。


   で、気になったのは3番目です。

   田村さんが歌っているのでベースオバケ……のはずなのですが「爆音で踊ってたら」という歌詞が出てきます。これベースの特徴っていうか田村さん本人(の特徴)なんじゃね?

   しかも「ツノが生えてきたオバケ」と続きます。

   田村さんというよりもむしろ、田村さんが部屋でベースの練習して暴れていたら、怒ったお母さんが「アキヒロ、静かになさい!」って出てくる図なのではないでしょうか。

   3人目はベースオバケでも田村さんオバケでもなく、田村さんのママオバケ(?)。


   ベースだけ他のパートとは違う趣向になっていて、作詞した草野さんの田村さんへの愛を感じてしまいました。


* *

「オバケのロックバンド」はみんなでわいわい歌って楽しい印象の歌です。

   メロディも覚えやすいし、メンバー全員で歌えるように音域も広くないので誰でも歌いやすい。

   サビの「子供のリアリティ 大人のファンタジー」という歌詞もキャッチーでいい。耳に残ります。


   この「大人のファンタジー」についてですが、単語だけ聴くと「ファンタジー」なのでかわいらしく聞こえます。

   しかし「子供のリアリティ 大人のファンタジー」という文脈で読み直すとけっこう残酷なことを言っているようにも聞こえます。

   少年たちのロックバンドはリアルで現在進行形だけど、いい年こいた大人のロックバンドなんて過去の興奮の残滓にすぎない……とまでは言わないにしても自虐や皮肉は含まれているに違いありません。

   けれども、そうした歌詞を50代ロッカー4人がコーラスで歌っていると「年なんて関係ねー、他人の目なんて気にするな、楽しければいいじゃん!」っていう明るいメッセージが感じとれます。

   実際、MVの楽しそうに演奏するシーンを観ていると素直に楽しくなります。


   しかし、MVは楽しいだけではありません。

   演奏するメンバーの足元は酒瓶に挿した花で埋め尽くされています。

   これはファンシーなようでいてけっこう不気味です。

   タイトルの「オバケ」の意味をあらためて考えさせられます。あちらの世界がちら見えしている。


   そんなふうに、単語、歌詞の一文、メロディや演奏、映像、と歌の範囲や角度を変えていくと、かわいかったり、残酷だったり、楽しかったり、怖かったりして、おもしろいなーと思ったのでした。

   そして歌詞の解釈なんて意味ないなーとも。結局いろんな要素で変わってきちゃうんですよね、同じ言葉、同じ文でも。メロディや楽器の音を抜きにして歌の内容は語れないと思うのです。

  

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   いろいろ書きましたが、「オバケのロックバンド」は単純に楽しい歌!って感想が一番です。

   うちでは息子たちもサビだけ歌ってます。キャッチーで覚えやすいですからね。

   唯一無二の歌声で究極の仕上がりで歌ってくれる歌もいいですが、誰でも気楽に、みんなで歌える歌っていうのもいいですよね。


   でも男子小学生あるあるで、すぐに下ネタに走るんだよなー、あいつら。「大人の〇〇〇〇」って4文字なのが悪い。

   まあ下ネタでもなんでも、子供がスピッツの歌を覚えてくれれば嬉しいので、今は文句は言うまいて。


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