「魔法」「涙」はそれぞれスピッツのミニアルバム「オーロラになれなかった人のために」の1曲目と5曲目に収録されています。
「オーロラになれなかった人のために」(以下、「オーロラ」)はどうも苦手です。
これまでもほとんど聴いてきませんでした。
オーケストラアレンジだから?
静かな曲が多いから?
6分超えの長い曲があるから?
どれも合っていそうですが、それだけならスピッツの魅力でどうとでもカバーできそうな気がします。
最近になって苦手な理由にもう一つ思い当たりました。
それは「オーロラの歌がどれも歌詞というよりも詩に近い(気がする)」ということです。
どういうことかというと、歌詞カードを開いて歌詞を読んでみます。
「魔法」なら「消えてしまいそうな老いぼれの星も……」、
「涙」なら「君のまつ毛で揺れてる水晶の粒……」と。
なんなら声に出して読み上げてもいいかもしれません。
すらすらと読めてしまいませんか?
(まあ僕がメロディを覚えるほど聴き込んでいないというのもあるかもしれませんが)
本来、歌詞は詩よりもリズムが強いので歌うにはいいけど読むには適してないように思います。
例えば、同じく「魔法」と「涙」がタイトルにある「魔法のコトバ」と「涙がキラリ☆」のサビを読んでみます。
「魔法のコトバ 二人だけにはわかる
夢見るとかそんな暇もないこの頃」
「同じ涙がキラリ 俺が天使だったなら
星を待っている二人 切なさにキュッとなる」
読んでいてもつい歌のように区切って読んでしまいませんか?
(まあ聴き込んでいてメロディを覚えているというのもあるかもしれませんが)
特に赤字で強調したパート、これは'80〜'90年代のロックやポップに見られた「英語のワンフレーズ+日本語詞の繰り返し」というノリに近いものがあります。
例えば、
GLAYの"Freeze My Love"の
「Freeze my love 愛を凍らせて
二度と目覚めないようにと」とか。
trfの"BOY MEETS GIRL"の
「Boy meets girl それぞれの
あふれる想いに きらめきと」とか。
あるいはBOΦWYの”MARIONETTE”の
「鏡の中マリオネット もつれた糸を断ち切って」
こちらの方が日本語詞なので「魔法のコトバ」の構成に近いかもしれません。
英語のワンフレーズ(あるいは冒頭のワンフレーズ)のおかげで、歌詞がよりリズミカルになっています。
つまりこういったノリの良さやリズムの良さが、「魔法のコトバ」や「涙がキラリ☆」にはあるけど「魔法」や「涙」には少ないのではないかと思いました。
僕は常々草野さんの書く歌は詩だと思っていたのですが、それでも本当の詩ではなくてやっぱりメロディあっての歌詞なのかなぁと。
実際草野さんもなにかのインタビューで「メロディがないと歌詞が書けない」というようなことを言っていましたし。
そんなわけで、オーロラの歌は本当の詩に近いところが歌として聴いたときにちょっと苦手なのかなと思ったのでした。なんとなくですが。
* * *
それにしても「オーロラ」の歌は全体的に歌詞が美しいですね。(「ナイフ」は意味わかりませんが)
「田舎の生活」は特に美しいですが、「涙」のサビの「月のライトが涙で飛び散る夜に」なども比喩なのに絵画のよう。
とか思っていたら「魔法」の歌詞に「胸の谷間からあふれ出た歌は」と出てきて「胸の谷間」っていかにも草野さんらしいなぁと苦笑いしてしまいました。
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