身体のどこかで想う 〜スピッツ「アカネ」感想

「アカネ」はスピッツの9thアルバム「ハヤブサ」の14曲目に収録されています。

スピッツ「ハヤブサ」

「アカネ」はCDアルバムのラストを締めくくる曲です。

   ただ、一番最初に発売されたレコード(1枚組)では、曲順が逆になっていて「アカネ」が1曲目になっていました。(ラストが「今」)

   レコードは持っていないし、全部の曲の順番を逆に聴いたこともないですが、「アカネ」は冒頭に持ってきても意外としっくりきます。

「朱くかすむ夕陽を待とうか」という歌詞にエンディングを感じることもできるし、「新しい歌ひとつ」という言葉にオープニングを感じることもできる。

   始まりにも終わりにもなる、というのはなかなか面白い特性なのではないでしょうか。


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「アカネ」のなかでものすごく印象深い歌詞があります。

「身体のどこかで彼女を想う
   また会おうと言った 道の上」


   当時、女の子とつきあったことがなかったので(回想するとき毎回書いている気もしますが)、「心のどこか」ではなくて「身体のどこか」という歌詞にカルチャーショック(?)を受けました。

   これは文才云々関係なく、経験の差で自分には絶対に書けない歌詞だと、圧倒的敗北感に押しつぶされました。(草野さんと競ってたんかい)

   このとき僕は両膝をつきながらも「いつか彼女ができたらこの歌詞を身を持って体験してやろうじゃないか」と固く拳を握りしめて、朱く焼ける夕陽に誓ったとか誓わないとか。

   まあ、身を持って体験するのは彼女と別れるときなので、あまり嬉しくもないですが。


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「アカネ」に関する最も刺激的な体験は「醒めない」のツアーで唐突に演奏されたときのことです。

   突然のイントロに何の曲か思い出せなくて、でも「これはー!!」って感じで身体が先に反応して、飛び跳ねていました。

   そして歌詞が始まる直前に「アカネだぁ!」って思い出したのです。

   好きな曲なので、演奏されたことが嬉しくて楽しくて、歌のあいだ、ずっとぴょんぴょん跳ねてました。

(なお隣りで聴いてた妻は「え?なに。これそんなに有名な曲なの」って感じだったそうな)


   頭では思い出せなくても身体のどこかでは歌を覚えていた、というお話でした。


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