重くて軽やかでいまの君が恋しい 〜スピッツ「恋のうた」感想

「恋のうた」はスピッツの2ndアルバム「名前をつけてやる」の10曲目に収録されています。
 

   文句なしの名曲です。
   小さくまとまっていて、歌詞もかわいいし、メロディも親しみやすい。
   ちょっと弾き語りしたくなる感じもいいです。
   なによりキーがそれほど高くないので、男でも歌いやすい。笑

   CDで聴いてもその良さは十分に伝わってくるのですが、ライブビデオ「JAMBOREE 2」に収録されたテアトロンでの野外ライブの映像を観ると素晴らしさが更に増します。
   草野さんがマラカスのようなものをふりながら歌っていて、夕焼けとノスタルジックな歌の雰囲気とが切なく混じり合って、なんとも素敵なのです。
   一回はライブで聴いてみたい曲です。(なんとなく、野外限定なのかな?)

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   歌詞がかわいいと書きましたが、基本はシンプルなラブソングです。ただ、ときどき草野節が入ってちょっとだけよくわからない宇宙を見せてくれるところがまたいいです。

   まず「おさえきれぬ僕の気持ち おかしな夢ばかり見てさ」という出だしで、心をつかまれます。
   恋の真っ只中にいるときは、もはや「ええ、そのとおりです」とうなずく以外ないです。

   次の「だけどここに浮かんでいる 君の頭の上にいる」はいまいちよくわかりませんが、小さい天使が星を引き連れてくるくる回っているイラストが浮かんで、とにかくかわいい。
   ふわふわと足が地についてないところが恋をしている感じをよく表しています。

   サビでは「君と出会えたことを僕 ずっと大事にしたいから」とストレートに告白しています。
   こんなふうに女の子に気持ちを伝えたかったなと思わなくもない、なかなかロマンチックな台詞です。

   その後「僕がこの世に生まれてきたわけにしたいから」と続きます。
   さすがにそれは「ちょっと重くね?」と、人によってはやや引いてしまうかもしれません。

   ラストの歌詞の前半は「ミルク色の細い道をふりかえることなく歩いてく」です。
   ミルク色というところから、深い靄(もや)のかかった景色を想像します。靄が出て、道も細いので、わりと前途多難です。
   しかし、振り返ることなく歩いていく、と言っているので、草野さんの歌詞らしくなく(?)前向きで明るいです。

   そしてラスト後半では「昨日よりも明日よりも今の君が恋しいから」と歌います。
   ここで過去も未来も君の全てを愛しているとか言われると重すぎてドン引きしてしまいますが、向き合っているのは今の君です。
   今の君を恋しいと言っているところに真摯なものを感じます。
   また「愛している」でも「好きだ」でもなく「恋しい」という言葉を使うことで、草野間隔とでもいうべき絶妙な距離感が出ています。近すぎない、でも遠くもない。

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「恋のうた」は短いなかに、ちょっと重いところから軽く明るいところまで、恋のいろいろな面を描いています。
   聴いていると、十代二十代のころのあれこれを思い出させてくれます。甘酸っぱいことも、苦いことも。

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