変わっていくけど色あせないもの 〜スピッツ「三日月ロック その3」感想

「三日月ロック その3」はスピッツのスペシャルアルバム第3弾「おるたな」の5曲目に収録されています。


   もともとはシングル「スターゲイザー」のカップリング曲として発表されました。
   A面が星で、B面が月というのがなんとも風流ですね。
   また、「スターゲイザー」がBメロ抜きで短くまとまっているのに対して、「三日月ロック その3」はAメロBメロを繰り返して長め(と言ってもスピッツなので短いですが)の構成になっています。
   お互いを補間しあっていて、シングル盤の組み合わせとして非常によいです。

   ただ、なんで「三日月ロック」「その3」なんでしょうか。
「三日月ロック(アルバム名)」はアルバムとしてほぼ完成していたので、続編のようなタイトルの曲が発表されると蛇足に感じられますし、「その1」と「その2」がないのも気になります。
   当時の雑誌の中でタイトルの由縁を何か話していたような気がするのですが、思い出せません。
   個人的にはタイトルで損をしている曲という気もしなくもないです。

* *
   僕がこれまで抱いていた「三日月ロック その3」の特徴は「とにかくギターがご機嫌」というものでした。イントロや間奏に出てくるギターリフが耳に残ります。
   しかし最近聴き直してみると、めっちゃ歌詞が良いことに気づきました。

   特に2回目のBメロからサビの流れが素晴らしいです。

   まずBメロ。
「色あせないドキドキは形だけ変わっていくのだ
次いつ会えるかな」

   ドキドキ=君への熱い思いは変わらないと言うのではなくて、形は変わるけれど色あせたりしないと言っているのがミソです。
   なんていうか「変わらない思い」って、素敵だけどちょっと嘘くさいじゃないですか。いやいや、そんなの物語のなかだけだろっ、みたいな。
    そうではなくて、季節がうつろうように、思いの形や思い方は変わっていく。でも根っこの部分は色あせたりしないと言っている。
   あるいは君は色あせることなく僕の憧れのままで、会うたびに違うドキドキを与えてくれるということなのかもしれない。
   それって、なんかいいなぁと思うのです。
   変化を肯定しているところが何より素敵です。

   次はサビです。
「そして暖めて冷やされて 三日月 夜は続く」
   ここでタイトルの「三日月」が現れます。

   ドキドキの形が変わることを、夜ごとに形が変わる月で比喩している。(たぶん)
   月は刻々と変化して、様々な形を見せてくれるけど、月は月であって、変わらない。
   さりげなく歌詞のなかに挟み込んできた「三日月」がビジュアル的にも隠喩的にもいい味を出してます。きれい。

* * *
   歌詞の一部だけピックアップしましたが、他にも「桜」「田舎道」「駅前広場」などグッとくる描写がいくつもあります。
   発売当時はあまり響かなかったのが不思議なくらい好きな歌詞だらけです。
   たぶん、仕事が忙しくて心が荒んでいたのかなー。これが片思いの真っ只中の十代後半だったらまた違ったかもしれませんね。
「色あせないドキドキは形だけ変わっていくのだ 次いつ会えるかな」って歌詞に自分を重ねて、悶ていた気がします。
   歌はタイミングですね。なかなか難しい。