ムーディーなふうみー 〜スピッツ「ブービー」感想

「ブービー」はスピッツの16thアルバム「見っけ」の6曲目に収録されています。
スピッツ 見っけ


   いつものスピッツとは違う、一風変わった曲です。
   昭和っぽいというか、ムーディーな雰囲気があります。ムーディーの意味があってるかわかりませんが。

   音楽雑誌の「MUSICA」のインタビューでは、草野さんが「サイケっぽい曲」と称していました。
   なるほど、こういうのをサイケデリックっていうんですね。どのへんのがそうなのか、いまいちわかってませんが。

   音楽のジャンル分けは苦手なので置いておいて……とりあえず、「ブービー」はアップテンポな曲が多い「見っけ」のなかではゆったりめで、アルバム前半をいい感じで締めてくれる歌だと思います。

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   変わった雰囲気ですが、歌詞を聴くと「ああ、草野さんだな」とわかります。

   例えば「いつもブービー 君が好き 少し前を走る」
   君はブービー(最下位から2番め)なんだけど、あくまで僕よりは早くて少し前を走っているんですね。常に僕は君を追いかける側だというのが、いかにも草野さんらしいです。
   そしてクラスで一番の美男美女の恋愛なのではなくて、普通の(というか普通よりも下の?)男の子と女の子の恋愛模様を歌っているのがいいです。共感できるし、感情移入しやすいですし。

   他にも「僕はデブリ(宇宙のゴミ)」「弱さでもいい 優しき心」など自己評価の低い歌詞が続きます。
   しかし自虐的なだけでは終わりません。
   それが最後の「薄着の心 消せないほのほ」です。
   炎ですよ、炎!熱いですね!しかも薄着ですから、直火で火傷してしまいそうです。

    最後にグッと拳を握りたくなる熱い一言を持ってくるあたりが、ロックバンドなスピッツらしいです。ロッケンロール!!

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   草野さんがパーソナリティを務めている「ロック大陸漫遊記」というラジオ番組があります。Twitterでは毎回オープニングナンバーが何かを予想することが盛り上がっています。
   だいたいその週のお題に合わせてくることが多いのですが、先日放送された「ツェッペリン風味」のバンドを特集する回では、「風味」つながりでオープニングナンバーに「ブービー」を予想する人がたくさんいました。

   なぜ「ブービー」かというと、「レモン風味 軽い罪 空に放つ」という歌詞が出てくるからです。
   この「レモン風味」というフレーズは不思議と耳に残ります。
   たぶん韻を踏んでいるだけで深い意味はないと思うのですが、けっこうな人が風味つながりで「ブービー」をあげているのを見ると、みなさん印象に残っているんでしょうね。柑橘系で爽やかですし。

   何気ないワンフレーズが誰の心にも印象に残るというのが、なんだか不思議で興味深いなーと思いました。