ツルツルでも凸凹でもないざらざらの 〜スピッツ「エスカルゴ」感想

「エスカルゴ」はスピッツの10thアルバム「三日月ロック」の9曲目に収録されています。

   記憶が正しければ、発売当時の雑誌のなかで「ブリティッシュ・ロックを意識して作った」と草野さんが言っていました。
   なので、「エスカルゴ」を聴くたびに、行ったこともないイギリスの音や空気に触れた気分になります。

   サウンドは骨太ですが重くはなく、明るくてノリがよいです。また歌詞はスピッツの王道とも言える「追いかける系」です。
「だめだな ゴミだな」から始まり「孤独な巻き貝」とネガティブワードが続いたあと、「新しい光に姿さらす」「よれながら加速していくよ」とやや上向きの展開になります。
   そしてサビでは「ハニー 君に届きたい」と思いをぶちまけ、「追いかける ざらざらの世界へ」と力強く歌いあげます。
   ネガからポジへと駆け抜けていくさまが気持ちいいです。

   特に最後の「ざらざらの世界へ」というフレーズが好きです。
   これから君を追いかけて入り込む世界は「ツルツル」でも「ピカピカ」でも「デコボコ」でもなく、「ざらざら」なのです。
「ツルツル」や「ピカピカ」では綺麗すぎます。そうかといって「デコボコ」だと歩くのが辛くてちょっと不安です。
   一方「ざらざら」には、砂利を触ったときのような手触り感があります。それはツルツルの殻のなかに一人で閉じこもっていたら知ることのできなかった、あたたかい感触なのではないでしょうか。
   綺麗すぎるとつまらないし、辛いのもちょっと嫌だし、でも新しい何かにワクワクしたい。「ざらざら」はそんなちょうどいい(?)魅力にあふれたフレーズだと思います。

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「エスカルゴ」はライブの準レギュラー曲くらいの位置づけの歌です。ライブで流れると、めっちゃ盛り上がります。
   特に、イントロや間奏に出てくるギターリフでは、ジャジャジャジャジャンのあとに「はい!」って感じで飛び跳ねると、楽しいです。
   ライブの前に、予習がてら聴いてから行くと、ライブをもっと楽しめると思います。