他愛ない話を楽しめるのがいい 〜スピッツ「愛のことば」感想

「愛のことば」はスピッツの6thアルバム「ハチミツ」の5曲目に収録されています。

   アルバム「ハチミツ」には大ヒットソング「ロビンソン」「涙がキラリ☆」が収録されていますが、他にも「ハチミツ」「あじさい通り」「君と暮らせたら」など名曲が揃っています。そうしたアルバムの名曲のなかでも群を抜いているのが「愛のことば」です。
   MVも制作されましたし、2014年にはリミックスVer.がドラマの主題歌にもなりました。
   最近ではMステのスピッツ街角ランキングみたいなコーナーで20位以内にも入っていましたね。
   アルバム曲としては露出度も高いですし、シングル級の名曲だと思います。

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「愛のことば」の特徴の一つは、体言止めのサビです。

「今 煙の中で溶け合いながら 探しつづける愛のことば」
「傷つくこともなめあうことも 包み込まれる愛のことば」

   サビが「〜の愛のことば」という形式で100%構成されているので、愛の純度も100%です。

   他にも名言というか名フレーズと言える歌詞がたくさんあります。
「限りある未来を 搾り取る日々から 抜け出そうと誘った 君の目に映る海」
「昔あった国の映画で 一度見たような道を行く」
「雲間からこぼれ落ちていく神様達が見える」
などなど。
   どのフレーズも不思議なようでいて、どこかで見たり経験したことがあるようでもあって、記憶の深いところを刺激してきます。

   それからMVに出てくるアンモナイト(?)がすごく印象的です。
   冒頭でぐるぐる回っているやつです。
   この映像のイメージが鮮烈なせいか、いつのまにか「愛のことば」を聴くと、音符が頭のなかでぐるぐると回るイメージが湧くようになりました。
   MVのラストでは裸の男女(?)が円を形どってぐるぐる回り、やがてアンモナイトの映像に重なっていきます。これもずっと記憶に焼き付いています。

   また、「愛のことば」には「愛する二人の愛の記憶を歌った歌」というイメージが漠然とあります。アンモナイト=化石=地球の記憶という連想のせいだと思います。
「愛のことばは愛のきおく」。ちょっと標語っぽいですが。なんとなく。



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   以下、余談。

   結婚して10年になるのですが、最近よく妻に「つきあっていた頃は『他愛ない話を楽しめるのがいい』と言っていたのに!」と責められます。

   どういうシチュエーションかというと、寝る前とかに、妻が昼間にあった話をしてくるのですが、長いわりにオチがないんですよね。いえ、オチはなくてもいいんですが、せめて投げっぱなしにはしないでほしいと思うわけです。こちらも会社で疲れて帰ってきてぐったりしているので。
   それで、つい僕が「だから何?」みたいなことを言ってしまうわけです。(よくないですね。汗)そしたら妻から返ってきたのがこの言葉なのでした。「つきあっていた頃は『他愛ない話を楽しめるのがいい』と言っていたのに!」

   妻に言われるまで、そんな台詞を言ったことなんて、すっかり忘れていました。というか、今もあまりよく思い出せない。
   でもたぶん「愛のことば」のなかの「くだらない話で安らげる僕らはその愚かさこそが何よりも宝物」という歌詞からきている気がします。
   僕は長い間、女の子とつきあったことがありませんでした。だから、いつしか「くだらない話で安らげる」関係に憧れるようになり、ようやく彼女ができたときに、浮かれて、ついついそんなことを口走ったんだと思います。(うん、言いそうだ)

   結婚して子供が生まれるとどうしても子供優先になり、夫婦で他愛ない話を楽しむ余裕がなくなってしまいます。
   育児はまさに「限りある未来を搾り取る日々」です。搾り取られて子供たちに飲み干されてる。(ネガティブ過ぎ?)
   だから、仕方ない、と言ってしまうと、妻がムスッとした顔を見せそうですが。

   たまには初心に帰って、妻と他愛ない話を楽しんでみようかなぁ、と思った今日このごろでした。
   おしまい。