スピッツ「ハチミツ」アルバム感想

 「ハチミツ」は1995年9月に発売された6枚目のアルバムです。
 大ヒットした「ロビンソン」と「涙がキラリ☆」を収録しているため、スピッツのアルバムのなかで最も有名なのではないでしょうか。
スピッツ「ハチミツ」
  発売当時は、アルバム曲の「ハチミツ」がシングル曲並みに有線でがんがん流れていました。まさにスピッツフィーバー!時代の寵児って感じでした。
 シングル2枚が立て続けにヒットしたあとの初のアルバムということもあり、ニューアルバムへの世間の期待も高かったのではないでしょうか?
 残念ながら、僕は「ハチミツ」が出たころはまだファンではなかったので、発売日を待ち遠しく思う楽しみを味わうことなく、アルバムは少し遅れて買いました。

 シングルはよかったんだけどアルバムはなぁ……という作品もたまにありますが、「ハチミツ」は聴く人の期待を裏切らない密度の高い内容になっています。
 しっとり聞かせる「愛のことば」「あじさい通り」「Y」があり、おバカなノリの「トンガリ’95」「グラスホッパー」があり、さわやかな「ハチミツ」「歩き出せ、クローバー」「ルナルナ」「君と暮らせたら」がある。
「ロビンソン」「涙がキラリ☆」で作り上げたスピッツの世界をそのまま広げたようなポップなアルバムだと思います。
 ただ、もう少し激しいロックな曲もほしかった、という物足りなさがあり、ちょっと惜しい。

 また、4人の若々しいエネルギーとバンドの完成度とが最もバランスよく交差しているのが、「空の飛び方」から「ハチミツ」あたりなのではないかと思います。(例えば、1st「スピッツ」だと完成度で難があるし、10th「三日月ロック」だと初期の世界観が失われつつある)
「ハチミツ」では、ボーカル草野マサムネの声はまだ若く、甘い。歌詞も初期の世界観を残した不思議な雰囲気があります。一方でバンドの演奏は初期よりも厚さを増して力強い。

 今のスピッツももちろん好きですけど、このころのスピッツにしか出せなかったものがあって、それはもう二度と戻らないんだろうなぁと思うと、ちょっと寂しくもあります。
(そして、その時期にスピッツのファンじゃなかった過去の自分が恨めしい)
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  おすすめは、アルバム曲の中から選ぶとすると、「愛のことば」「トンガリ’95」「君と暮らせたら」です。