スピッツ「ヒバリのこころ」は最高のデビュー曲だ!

「ヒバリのこころ」はスピッツの1stアルバム「スピッツ」に収録されています。
   アルバム発売同日にシングルとしても発売されました。記念すべきデビューシングルです。

「ヒバリのこころ」はデビュー曲として最高の一曲だと常々感じています。
   デビュー曲がそのアーティストの個性や方向性を示すものだとしたら、ロビンソンやチェリー、空も飛べるはずではなく、惑星のかけらでも猫になりたいでもおっぱいでもなく、「ヒバリのこころ」が一番ふさわしいです。

   いや、スピッツのメンバーがどう思っているかはわかりませんけども。

   ということで、「ヒバリのこころ」がデビュー曲として最高である理由を勝手に書き綴ってみました。

理由1 スピッツらしいタイトル

   タイトルに生き物の名前が入っているところに、スピッツらしさがさりげなく出ています。カタカナとひらがなの混ざり具合も絶妙にかわいらしい。
   また選んだ生き物が小鳥というのも、奇をてらいすぎてなくていいです。これが「シロクマのこころ」や「オケラのこころ」や「ハナムグリのこころ」だったら、ちょっと引いてしまったかもしれません。

   歌詞のなかに「僕らこれから強く生きていこう」とあり、「小さな生き物」が強く生きていく様を描いているところが、これ以降のスピッツにも通ずるものがあります。

理由2 歌詞がいい

   まずレトリックの巧みさです。

   冒頭の出会いの部分の歌詞がすごい。
「僕が君に出会ったのは冬も終わりのことだった 降り積もった角砂糖が溶けだしてた」
   角砂糖は雪と掛けていて、雪が融けて春が訪れることを比喩していると同時に、これがそのまま君と僕のいる景色を聞く者にイメージさせてくれます。

   例えば、僕は喫茶店に一人でいて、暇つぶしにストローをくるくる回しながらアイスコーヒーのグラスのなかの角砂糖が溶けるのをなんとなく眺めている。向かいのテーブルにはまだ名も知らない君が一人で座って本を読んでいる。その姿がグラスのなかに歪んだ光とともに映っている。
   あるいは、初めての待ち合わせで、先に着いた僕が白と茶色の角砂糖をピラミッド状に積み上げて緊張を紛らわせていたら、君が現れて、嬉しくて慌ててしまいピラミッドが崩れ、角砂糖がコーヒーのなかに落ちてゆっくりと溶けていく。
   なんとなくそんな恋の一場面を想像できるのがいいです。

   それから、後々まで語られることになる「目をつぶるだけで遠くへ行けたらいいのに」という有名なフレーズが出てきます。
   スピッツの歌は「ヒバリのこころ」「空も飛べるはず」「こんにちは」と進むにつれて、空に思いを馳せることや遠くへ行くことに対する認識が変化していきます。
   何もせずにただ遠くへ行くことを妄想していた少年が、誰かを想うことで空を飛べるはずと信じ、やがて大人になり心に生えた足でどこまで歩いてけることに気がつき、自分の足で進んでいく、という成長譚になっている。
   一人の人間の、あるいはバンドの感性や考え方が成長し発展してくい歴史を見ていくことができるのも、ずっと旅の途中にあるスピッツらしい特徴といえます。

理由3 ギターで始まり、ギターで終わる

   なんといってもギターです。ギターがかっこいいです。
   まずイントロで入るギターリフ。このフレーズは間奏、アウトロでも繰り返し使われています。シンプルなのにすごいパワフルで、何より耳に残ります。
   それから、アウトロの長いギタープレイ。これがすごくいい。ここが歌の大サビだといっても過言ではないくらい、僕のなかでは「ヒバリのこころ」と言えばラストのギターです。
   アルバムではフェードアウトしていくのですが、ライブではもちろんきっちり弾き切ります。
   上昇感と熱量がほんとたまらないです。アウトロだけいつまでも弾いていてほしい。そしたらきっと僕はいつまでも飛び跳ねてます。それくらい好きです。

   なんだか興奮気味になってしまいましたが、とどのつまり「ヒバリのこころ」はギターバンドとしてのスピッツの原点を押さえている、ということを言いたかったのです。
   デビュー曲がギターバンドであり、ロックバンドであり、ライブバンドであるという原点=初心に帰れる場所だっていうのは大事なことだと思うんですよね。なんとなく。

   ということで、「ヒバリのこころ」はスピッツらしいタイトルと、スピッツらしい歌詞と、スピッツらしいギターサウンドを備えているので、デビュー曲として最高だ!というお話でした。

* * *
   個人的には「ヒバリのこころ」の粗削りで未完成なところが好きです。と言っちゃうとダメな気もしますが。
   なんだろ、成長の余地のある歌というか、バンドの成長とともに進化していく歌というか。

   例えば、最新の3050のライブBDでは、三輪さんのギタープレイが明らかにそれ以前よりも、キレッキレッでかっこいいんですよね。
   アウトロが長いから演奏の自由度があって、毎回何か違うものをぶっこんで来てくれる気がして楽しみです。
   なので、またライブでの演奏、お願いします!!