自由と蛾 ~スピッツ「オケラ」感想

「オケラ」はスピッツのスペシャルアルバム第3弾「おるたな」の14曲目に収録されています。

   おしゃれでふわっとした印象の「おるたな」のなかにあって、「オケラ」だけはハードロックで異色です。
   他から浮いている、というよりも水面ちょい下に潜っている感じ。あるいは灰色で不良っぽい。
   ドラムもギターもどこか重たくて、ボーカルも歌われている歌詞もちょっぴりトガッています。
   アルバムを13曲目まで聴いてほわーっとなった頭を、最後の最後にロックという名のハンマーでガツンと殴ってくれる、みたいな。
   こういうザラッとした手触りの曲が一曲あるとアルバムが引き締まっていいですよね。

   そんな「オケラ」のなかで好きな歌詞はなんといっても冒頭の「もっと自由になって 蛾になって オケラになって」です。
   自由の象徴が、鳥でも魚でも風でも雲でもなくて、蛾やオケラというのがすごいですよね。
   虫捕りやガラス玉集めに夢中になっていた少年がそのまま青年になって自由を欲しがっているような感じがして好きです。

   でもなんで蛾やオケラなんでしょうね。
   僕はオケラを(たぶん)見たことがなくて、どんな虫かネットで調べていたら「オケラになる」という言葉をみつけました。
   お金がなくなりスッカラカンになることを指すそうです。由来はオケラを前から見ると万歳をしているように見えるため、一文無しでお手上げ状態になった姿に見立てているんですって。
   一文無し!!……なかなか自由になるのも大変です。

   空を飛べる自由、蛾の自由、オケラの自由、いろんな自由がありますが、ここで歌っている自由は「エグ過ぎるスライダーを打ち返す」ような戦って勝ち取る自由なのかなと思いました。
   蛾やオケラが何と戦っているのかはわかりませんが。とりあえず一文無し、裸一貫で世界と向き合っているイメージはあります。……そんなところがロックなのかな、と思ってみたり。