無線LANルーター通信速度テスト ~4MIMO 5GHz対応の効果は?

   前回からの続きです。
   家の無線LANをレンタルの無線LANカード(2.4GHz)からIOデータ製無線LANルーター(2.4/5GHz)に変更しました。
   せっかくお金をかけて無線環境を新しくしたので、どれくらい快適になったか知りたくなります。
   そこで、無線LANの変更前後でどれくらい通信速度が改善したか(あるいは変わらなかったのか)を実験しました。
   今回はその実験のレポートになります。
   なお、記事が長くなってしまったので、一番最後に結果を箇条書きでまとめています。
IOデータ製「WN-AX2033GR2」

通信速度実験で知りたいこと

   まずは実験の目的と何を知りたいかを整理します。
  • 2.4GHzシングルバンドから2.4/5GHzデュアルバンド対応になったことで通信速度はどれくらい改善したか?
  • 明らかにアンテナ性能が悪そうなレンタル品の無線LANカードから、明らかにアンテナ性能が良さそうな4アンテナ構成にパワーアップしたことで、通信速度や通信距離はどれくらい改善したか?

通信実験に使用したセットとツール

   次に、実験に使用するセットと速度測定に使ったインターネットサイトを書きます。

無線LANルーター

  • 変更前:レンタル無線LANカード「SC-40ne」(2.4GHzのみ)
  • 変更後:IOデータ製「WN-AX2033GR2」(2.4/5GHzデュアルバンド)

測定機種

  • SH-M05(2.4GHzのみ対応。5GHz非対応)
  • Zenfone3ultra(2.4/5GHzデュアルバンド対応)
   ※両機種ともMIMO非対応

通信速度測定サイト

測定回数

   上記サイトで3,4回測定した結果を載せています。

実験場所

   実験場所には、一番よく使うリビングルームと、無線LANルーターから一番遠い書斎の2種類を選びました。

実験環境(A) 1Fリビングルーム

   我が家のホームゲートウエイはリビングルームのTVの裏に設置してあります。無線LANルーターも同様にTVの裏に設置しました。
変更前の無線LAN
無線LANカードを挿したホームゲートウエイをリビングのTVの裏に設置

変更後の無線LAN
「WN-AX2033GR2」をTVの裏に設置

   1Fリビングルームの実験では、TVの前のテーブルにスマホを置いて、TVの裏の無線LANルーターと通信させます。
   ほぼ見通しで距離も近いため、スマホの無線LANのアンテナバーは100%、電界強度は「強」、リンク速度は72Mbpsであり、アンテナ・無線的には全く問題のない状態です。

実験環境(B) 2F書斎

   無線LANルーターは(A)同様に1Fの正面のリビングルームに置いて、測定機(スマホ)は2Fの最奥の書斎で手に持った状態とします。
   送受信機間の距離は、水平距離が約12m、垂直距離が約3mなので、直線距離にして約12.4mです。
   また通信路の間には壁2枚、床1枚があります。
   なお、木造2階建てです。

   Test①②③は(A)1Fリビングルームで、Test④は(B)2F書斎で行いました。

   前置きが長くなってしまいましたが、いよいよ次から、通信速度の結果を報告します。

Test① 1対1通信

   まずは親機と子機(スマホ)1台のみをつなげてのテストです。
   場所は(A)1Fリビングルームです。

通信速度結果

無線LAN変更前 18~19Mbps (SH-M05_2.4GHz)
無線LAN変更後① 19Mbps (SH-M05_2.4GHz)
無線LAN変更後② 21~22Mbps (Zenfone3ultra_5GHz)
※()内は測定機種名と周波数帯を表しています。

   近距離でスマホを1台のみ接続した状態では無線LANを変えたことによる改善はほとんどありません。
   2.4GHz帯よりも5GHz帯の方が若干スピードが速い、くらいです。

Test② 子機複数で動画を視聴

   高負荷条件での実験という意味で、複数の通信機器を接続して動画を観ている状態にして、通信速度をテストしてみました。
   使用した機種は次の5台です。
  • Fire TV stick (2.4/5GHz)
  • 10.1inchタブレット (2.4/5GHz)
  • 8inchタブレット (2.4/5GHz)
  • Zenfone3ultra (2.4G/5Hz)
  • SH-M05(2.4GHz)
   このうち、Zenfone3ultraとSH-M05のどちらかを測定機として用い、残りの4台はYouTubeもしくはAmazon Primeで動画を視聴している状態にしました。YouTubeは最高画質の1080pに固定。かなりトラフィックの高い状態のつもりです。
   場所は(A)1Fリビングルームです。
TVでPrime Video、タブレット等でYouTubeを視聴している状態

   実験は機種と周波数を変えて3種類行っています。3種類の実験条件は次の通りです。
   ※動画視聴に用いた端末と周波数帯をそれぞれ記載しています。

実験条件

無線LAN変更前
測定機: SH-M05(2.4GHz)
動画視聴:
残り4台を2.4GHzで接続

無線LAN変更後①
測定機: SH-M05(2.4GHz)
動画視聴:
残り4台を5GHzで接続

無線LAN変更後②
測定機: Zenfone3ultra (5GHz)
動画視聴機:
残り3台を5GHzで接続
SH-M05 のみ2.4GHzで接続

通信速度結果

無線LAN変更前 15~16Mbps (SH-M05_2.4GHz)
無線LAN変更後① 17~19Mbps (SH-M05_2.4GHz)
無線LAN変更後② 20~22Mbps (Zenfone3ultra_5GHz)
※()内は測定機種名と周波数帯を表しています。

   変更前後で通信速度が劇的に改善したということはないですが、無線LANルーター変更後の方が、同じ2.4GHz帯同士で比較すると2,3Mbpsほど速くなっています。
   他のセットを5GHzで接続したので2.4GHz帯の通信路が空いたおかげかもしれません。
   また、測定機種を5GHzで接続すると、更に3Mbpsほど速度が改善しています。

   ただ、この速度差を体感できるかというと微妙なところです。
   無線LAN変更前であっても、動画を同時に映している4台のセットがコマ落ちしたりブロックノイズが出たりしているようには見えませんでしたから。
   もとはと言えば、動画視聴時の動作が不安定に思えたので、今回の無線LANルーターの新規購入に踏み切ったのですが、意外と変更前でも通信状態は安定してたのかな??

Test③ Bluetoothスピーカー接続時

   2.4GHz帯を使用するBluetoothスピーカーとスマホをつないで音楽を流している状態で通信速度のテストをします。
   場所は(A)1Fリビングルームです。
(左)Bluetoothスピーカ、(右)Zenfone3ultra

   測定機種には5GHz帯にも対応しているZenfone3ultraを用いました。

通信速度結果

無線LAN変更前 3Mbps (2.4GHz)
無線LAN変更後 23Mbps (5GHz)

   まずBluetoothと同じ2.4GHz帯でWi-Fi接続していると通信速度が大幅に劣化することがわかりました。
   Bluetooth未接続の場合は18~19Mbps程度だった速度が3Mbpsまで落ちています。
   これは経験的にも思い当たる節があります。これまでにもキッチンで、Bluetoothスピーカーを使ってサブスクリプションサービスの音楽を聴いていると、ときおり音が途切れることがあったからです。

   BluetoothはWi-Fiの空いているチャンネルを選んで通信することで干渉を防止していると聞いていたので、この通信速度の劣化は意外でした。

   一方、Wi-Fiを5GHzで接続すると、通信速度の劣化はなく、Bluetoothの影響は全く見えなくなりました。
   使用周波数が違うから当たり前と言えば当たり前ですが、「5GHzの奴め、なかなかやるな」と思わずニヤリとなりました。

   体感での使用品質と測定した数値とが一致した結果でした。

Test④ 遠距離の通信

   最後に、家の端と端という一番距離の離れた条件で通信速度をテストしました。
   場所は(B)2F書斎です。

   測定機種にはSH-M05を用いました。(2.4GHz帯のみ)
   さすがに遠いので5GHz帯はアンテナバーが立ったり立たなかったりの状態だったので省略しました。

通信速度結果

無線LAN変更前 2Mbps
無線LAN変更後 8~11Mbps

   これは体感でもわかる改善度でした。
   無線LAN変更前は、まずアンテナバーが1本分しか立っておらず、受診レベルが低い。リンク速度も1Mbps程度です。
   また、速度測定中に表示される進捗グラフが0%から100%までなかなか進まず、かなりじれったくなりました。途中で止まってしまったのではないかと心配になるレベル。

   一方、無線LAN変更後は進捗グラフがスムーズに進み、測定完了までの時間が明らかに短かったです。アンテナバーも1~2本立っており、リンク速度も10~20Mbpsほどありました。視覚的にも安定していましたね。

  新しく設置したIOデータ製「WN-AX2033GR2」は4アンテナ内蔵(2.4GHz用のアンテナは2つですが)なので、ダイバーシチ効果で弱電界の受信感度が改善していると思われます。(注:スマホがMIMO非対応)
   あるいは、変更前の無線LANカードよりも筐体が大きくなっているので、アンテナ設計に余裕ができて、アンテナ単体の性能が改善していることも考えられます。

   ということで、無線LANルーターを新しくすることで、家の端から端まで電波が届くようになりました。これが一番はっきりとわかる効果でした。

通信実験を終えて

   今回、無線LANルーターを古い無線LANカードから新しいIOデータ製の無線LANルーターに変更しました。
   当初の目的は、子供が大きくなり、リビングで団らんしているときに無線LAN接続している通信機器が増えたので、通信環境を改善したいというものでした。
   しかし、冷静に実験結果を見ると、実は変更前の状態でも、通信状況はそれほど逼迫していなかったように思われます。
   何故ならTest①②の結果より、変更前後での通信速度の改善量は僅かだったからです。

   変更後の測定結果が伸びなかった理由として、自分が使っているスマホ/タブレットの無線LANスペックが低いせいで、新しい無線LANルーターの性能を十分に引き出せなかったというのがちょっとあります。MU-MIMOなんて言う”おニュー”な機能には対応していませんし。

   それでは無線LANルーターを新しく買い替えた意味はなかったのかというと、そんなことはありません。
   はっきりとした改善効果として、Bluetooth通信時の通信速度アップと、通信距離の拡大がありました。
   前者は5GHz帯が使えるようになったためであり、後者はダイバーシチをふくめたアンテナ性能の改善(推測)によるものです。

   今のところ、通信も安定しているし、通信速度の改善も(一部で)得られたので、IOデータ製「WN-AX2033GR2」を買ってよかったと思っています。

まとめ

  • 無線LANを2.4GHz帯から5GHz帯に変更すると、通信速度は若干改善するが、劇的ではない(Test①②)
  • Bluetooth接続時は5GHz帯で通信することで、通信速度は明らかに速くなる(Test③)
  • 4MIMO、360度放射のアンテナにすることで、木造家屋の端から端まで電波が届くようになる。スマホ側がMIMOに対応していなくても効果あり。(Test④)