あ、大丈夫そうなんで。 ~スピッツ「君は太陽」感想

「君は太陽」はスピッツの13thアルバム「とげまる」の14曲目に収録されています。

   ご機嫌なギターで幕を開けます。ギラギラとしたサウンドと「太陽」という単語から夏を感じられます。海も青空も水着も出てきませんが、サマーチューンな歌です。

   初めて聴いたときは、スピッツにしてはキャッチ―でひねくれたところがないので凡庸な印象でしたが、聴くほどに好きになりました。純粋で真っすぐで爽快で気持ちのいい歌です。
   特にとげまるツアーのライブBDの映像が素敵です。「君は太陽」がラストを飾っているのですが、お客さんがみんなすごい笑顔なんですよね。みんなが笑顔になれる歌が名曲でないはずがない!!

   ということで、言いたいことはほとんど言ってしまった気がもしますが、「君は太陽」の好きなところを3つあげたいと思います。

   好きなところ1つ目、
   ギターです。
   イントロのご機嫌なフレーズ(これは3回出てきます)と、間奏のぐんぐんと空に昇っていくようなフレーズ。
   どちらも爽快で、ワクワクします。

   好きなところ2つ目、
   恋愛ともそうでないとも取れる絶妙なサビの歌詞です。

「あふれ出しそうなよくわかんない気持ち」という歌詞を最初聴いたときは恋の始まりの心情と思いました。
   でもAメロからの流れを何度も聴いているうちに、これはあきらめてしまいそうな夢や負けそうな現実に対して尻込みしている自分のなかに渦巻いている「負けたくない、前に進みたい」という感情を表現しているのではないかと思い直しました。
   そんな自分のなかのモヤモヤとした感情を見透かして”君”は嫌悪を示すと同時に、突き放す優しさで背中を押してくれるわけですね。「負けるな、飛びこめ」と。

   太陽のように崇める”君”との恋物語のようでもあり、逆境に立ち向かう”僕”の成長物語でもあり。そんな両面性が良いです。

   好きなところ3つ目、
   語感のいい言葉が多い。
「斜めった芝生」とか「キラッとなるシナリオ」とか「ヒリリと痛い」とかです。
   特に「ななめった」はリズムの乗り方も最高で思わずニヤッとなります。
   ”君”に背中を押されて芝生の斜面を転がっていくという表現も面白い。

   そして最後の台詞がちょっぴり優しい。
「理想の世界じゃないけど 大丈夫そうなんで」
   案ずるよりも生むがやすし、ではないですが、飛びこんでみたら意外といけそう、って感じだったのかな。

   また「大丈夫だよ」じゃなくて「大丈夫そうなんで」というところが、銭湯で隣りに座った人と世間話をしているような気軽さがあり、好きです。
「ちょっと前まで忙しかったみたいだけど、最近はどう?」「あ、大丈夫そうなんで。ありがとうございます」みたいな。

   草野さんの声で「大丈夫そうなんで」と言われると、なんかホッとしますよね。
「うまくいくことばかりじゃないけど、たぶん大丈夫。気楽に行こう」って気持ちになれます。