スピッツ「とげまる」アルバム感想

「とげまる」は2010年10月に発売されたスピッツの13枚目のアルバムです。
   キャンドルに囲まれて空を見上げる女の子のジャケットがかわいいです。いいですよね、このデザイン。
スピッツ「とげまる」

   当時の音楽雑誌でライターさんが「全曲シングル級!!」と絶賛していました。
   実際、客観的なデータで見てもその豪華さがうかがえます。全14曲のうち、シングル曲が4曲(若葉、君は太陽、つぐみ、シロクマ)、シングルではないけれどタイアップのある曲が4曲(ビギナー、恋する凡人、幻のドラゴン、えにし)、シングルではないけれどMVが存在する曲が2曲(新月、どんどどん)と、10曲が何かしらの形で外に向けて発信されています。
   スピッツ史上最も贅沢な一枚といっても過言ではないかもしれません。自分のなかでも、大好きな一枚です。

   脱力系の「シロクマ」、青くさく胸が痛い「若葉」、疾走感があって気持ちのいい「恋する凡人」、新境地ともいえる神秘的な「新月」、ちょっとヴィンテージな味わいの「TRBANT」、メモリーズを彷彿させるギザギザなロックナンバーの「どんどどん」など。
   色や形の全く違う曲が14曲も詰まっているのに、バラバラに離れることなく、しっかり手をつなぎ合って、1つにまとまっている。「とげまる」はスピッツのギターバンドとしての一つの到達点だと当時は思いました。(「当時は」と書いたのは、その後、「小さな生き物」「醒めない」でも同じことを思ったからです)

   また、プライベートでは、この前年に3年間つきあっていた彼女と結婚して、一度仙台に転勤した後に、半年後にまた金沢に戻って、というドタバタがありました。
   それから「とげまる」の発売した時期には妻のお腹のなかに長男が宿っていたのが、「とげまる」のツアーが始まったころには世に生まれ出て、初めての子育てはわからないことだらけで、しかも長男は夜泣きがひどくて、毎日寝不足で、と生活が劇的に変化し、毎日くるくる目を回していました。

   そんな風に環境が大きく変化して混乱したり疲弊したりしていた時期によく聴いていたのが「とげまる」です。大変な毎日に、ときに活力となり、ときに清涼剤として癒しになるなど、大活躍してくれ、とても助かりました。とげまる、ありがとう!

   それにしても、こんなに大絶賛の「とげまる」ですが、このあとに更に凄い「小さな生き物」「醒めない」が控えているわけですからね。'10年代のスピッツの上昇力といったらほんと半端ないです。

   おすすめ曲はシングル4曲を除くと、「恋する凡人」「新月」「どんどどん」です。あとは、妻とうちの母が好きな「TRBANT」もあげておきます。