朝に聴いてほしいアルバム ~徳永英明「太陽の少年」感想

「太陽の少年」は1995年12月に発売された徳永英明の9thアルバムです。

   前回はアルバム(と未来飛行)の思い出をつらつらと書かせてもらいました。
   今回はいつもどおりアルバムの感想を書きます。

   僕のなかではここから徳永英明の第3期が始まったと思っています。
徳永英明「太陽の少年」

アルバム「太陽の少年」感想

   以前のアルバムに比べて声質が変わっています。太く力強くなっている。
   リバーブも抑えられているので、声がクリアになり、徳永さんの歌声の魅力がダイレクトに伝わってきます。(というか何故初期のアルバムはあんなにリバーブが強かったんでしょうか……)

   当時の雑誌のなかで徳永さんが「今までのアルバムは夜に聴くものだとしたら、このアルバムは朝に聴いてほしい」と言っていました。ほんとにその通りだと思います。
   長い夜が明けて新しい光が差し込む。そんなアルバムです。

   個人的には大好きなアルバムなのですが、徳永さん本人の評価はいまいちらしいです。
   い、いいアルバムですよ!!

各曲感想

   ここからは簡単に各曲の感想を。

1. LA MU

   インストもの。月の満ち欠けや潮の満ち引きを感じさせる静かで美しい旋律が魅力です。「LA MU」単体でも最高の完成度ですが、2曲目の「未来飛行」へと続く流れが素敵です。
「未来飛行」をじっくり聴きたいときは必ず「LA MU」から聴きます。

2. 未来飛行

   一番好きな曲です。自分の青春時代を代表する一曲……なのですが、当時の雑誌のインタビューのなかで「飲み会で酔っ払ってるときにメロディができた」と語っていたのが地味にショック。うんまあ出自は気にしないことにします。
   発表から20年以上経ちましたが、色あせることなく、いつ聴いても優しく前向きな気持ちにさせてくれます。
   とはいえ、時間はどうしようもなく過ぎるもので、「いつのまにか大人になって……」というサビを”大人になんてなりたくない”と思いながら聴いていたのに、気がつけば四十代を目前にひかえてしまったり。「いいか君も大人になって素敵な夢をかなえてくれと」という歌詞の”君”に自分のことを重ねていた若造が、今では我が子に向ける親目線の歌詞として感じるようになったり。
   まあ流れた年月の分だけいろいろありますが、「忙しさに負け」ずに「今を迎えてあなたにありがとう」という気持ちでがんばっていこうと思います。なんのこっちゃ。

3. 裸足の太陽

   ちょっぴりダサい感じもしなくもないメロディと歌詞ですが、今までにないロックテイストな仕上がりが新鮮でした。

4. The Sun

「世紀末」「占い師」という歌詞、ラストの終末的な描写など、「ノストラダムスの大予言」を思い起こさせるハチャメチャな歌詞に、’90年代(=20世紀の終わり)を感じます。変な歌なのですがクセになる。
   最後にバクが朝日のなかに消えていくオチがナイス。

5. 君と僕の声で

   当時は珍しかったように思う徳永さんのファルセットを聴けます。
「君と僕の声で全ては生まれるから」というサビが優しい。

6. Mr.Blue

   当時の雑誌のなかで「いつか海外で聴いてもらいたい」と話されていたように思います。(違ってたらすみません)
   日本の?子供の?将来を憂いていると思われる歌詞とメロディが心に刺さります。
   中盤の「夢は どこへ……」の後の間奏のピアノの音がスリリングで好き。

7. MOTHER OF LOVE 小さな未来・・・

   静かに始まり途中から音が広がっていくタイプの名曲。アップテンポで明るいので、歌全体からサブタイトルの通り未来を感じることができます。
   サビの歌詞がとても好きで、何度もこの歌詞に救われた気がします。十代のころは変わりたいといつも強く思っていましたから。(「君の笑顔を抱いて 世界が変わればいいね その想いが僕を変えてゆくから」)
   長めのアウトロも気持ちいい。大好きな一曲です。

8. ROSARY

「踊ることを嫌って店を飛び出して行くROSARY」という歌詞に異国の雰囲気と大人の世界観を感じました。
「茜色の海を見よう……人は遥か昔海の中にいたというよ」という部分がかっこいい。
   黒と赤のイメージのある歌です。

9. 月と海の贈り物

   当時「初めての寝台列車 初めての旅立ち」という歌詞にわくわくしました。遠い地への旅に漠然と憧れていたのかもしれません。
   また「未来飛行」同様に「ありがとう」という歌詞が出てきます。全体的に優しく希望にあふれてます。
   Cメロ(「何もかもを越えて……雨の上がる空を虹が……」)がベタですがすごく好きです。

10. 太陽の少年

   同窓会ソング、というジャンルがあるのかわかりませんが、同窓会のあった日に昔の恋人と再会したワンシーンを歌った歌です。
   十代の自分には全くピンっと来ませんでしたが(まさに恋をしていたから)、今聴くと沁みますね。39歳やまぢです。

11. 永遠の果てに

   ボーナストラック的な1曲。ちょっと声質も違うので若干浮いている感がなくもないですが、好きな歌なのでアルバムに収録されてよかったです。
   歌詞もメロディも美しいです。「答えを聞かせて」と囁きかけるように入り、「悲しみのせいじゃない」と力強く歌い切っています。
   今でもよくこの歌を歌いながら自転車で帰ってます。歌の内容はけっこう壮大な感じなのですが、ついつい口ずさんでしまうんですよね。語りかけるようなメロディが親しみやすいからなのかな。不思議な魅力を備えた名曲です。
徳永英明「太陽の少年」(Amazon)

「太陽の少年」ツアーのこと

   生まれて初めてコンサートホールで観たライブが「太陽の少年」ツアーの金沢公演でした。
   一人で行ったので、心細くて、入場待ちで並ぶのも緊張、ホールに入るまでも緊張、席に着いてからも緊張、ずっと緊張しっぱなしで、帰りたくなったのを覚えています。
   でも帰らずにライブを聴けてよかった。終わったときはあまりに素晴らしい音楽体験に放心状態でした。
   セットリストはすっかり忘れてしまいましたが、一曲目が「MOTHER OF LOVE」だったことだけは覚えています。
   あと、隣りがカップルだったことも。笑