金色の波のなかを自転車で ~スピッツ「稲穂」感想

「稲穂」はスピッツのスペシャルアルバム第2弾「色色衣」の3曲目に収録されています。

   十数年前にうちの母親に「色色衣」を貸したら、「稲穂」が良かった、と言っていました。「スターゲイザー」でも「夢追い虫」でも「魚」でもなく「稲穂」というのが、身内ながら変わってるなぁと妙に感心したのを覚えています。

   母親が「稲穂」のどのへんを気に入ったのかはわかりませんが、この歌を聞いてまず感じるのは、全編クライマックス!といわんばかりのテンションの高さです。
   イントロ無しでアコギとともに歌い出すわけですが、アコギ=穏やかという一般的なイメージをくつがえして、いきなりがつんっと始まり、その後もずっと高いテンションを維持したまま最後まで歌いきってしまいます。
   アコギ舐めるな、というなんだか得体のしれないパワーがみなぎってます。

   僕はこのアコギのストロークを聴くと、自転車のペダルが風車のように軽快に回っているイメージが沸きます。
   そして、家なんて一軒もない見渡す限りの田園のなかを自転車で走っている姿を想像してしまいます。
   収穫前の金色の稲がどこまでも続いていて、その金色の波のなかを颯爽と駆け抜けていく。それが僕の「稲穂」のイメージです。
   人によっては青々とした水田をイメージするのかもしれませんが、自分のなかでは秋ごろなんですね。「夕焼けが世界を染めていた」とう歌詞に合う稲穂のイメージが秋あるいは晩夏だからかもしれません。

   そんなわけで、自転車で風を切って走るような疾走感があり気持ちのいい曲というのが、僕の「稲穂」の感想です。

   また、最初はアコギの印象が強かったのですが、あらためて聴いてみるとベースがめちゃめちゃ動いていますね。
   すごいブンブン言っていて、影の主役はベースだなと思いました。田村さん楽しそうです。