火焔土器ってなんだ? ~スピッツ「グリーン」感想

「グリーン」はスピッツの15thアルバム「醒めない」の6曲目に収録されています。

   ジャジャジャーン、ダダダダッという目が覚めるような力強いギターとドラムの音から始まるので、「あ、何か楽しいことが始まるぞ!」という気分になります。イントロからしてワクワクします。
   歌詞は全体的に青くさくて瑞々しいです。単語だけを拾っても「青い空」「甘い水」「種」「憧れ」など、エバーグリーンな感じがあふれています。
   それでいて2題目では「コピペで作られた流行りの愛の歌」などと毒づいたりもしていて、初期のスピッツにはない批判的な視点が垣間見えておもしろいです。
   間奏のギターソロも、駆け出せ青春!って感じで疾走感があり気持ちいい。

   そして、なんといってもサビです。サビの歌詞のなんと清々しいことか!
「今芽吹いたばっかの種 はじめて見たグリーンだ 憧れに届きそうなんだ」
   純粋でまっすぐで、見るもの全てが鮮やかで新しい。少年のような詩ですよね。
   夏休みに、まだかまだかと朝顔の芽が出るのを待っていた子供のころを思い出しました。そうして初めて自分で咲かせた花は他の花とは違う新しい色に見えていた気がします。
   また、芽が出ただけで「憧れに届きそう」と言っちゃうところも子供らしいです。大人になったら、大袈裟に喜ぶこともなく「いやいやこれからが大変なんだ、まだまだ先は長い」って冷静ですもんね。
   小さな芽を見て無邪気にはしゃいでいるところがとても素敵です。

   しかし、サビはこれだけでは終わりません。
「情念が 脳内の 火焔土器に あふれているよ」と続きます。
   上であんなピュアピュアな歌詞を書いた後に、情念ですよ、情念!
   しかも脳内の火焔土器にあふれるんですよ。

   ところで、火焔土器ってなんだ!?って思いませんでした?
   ちょっと脱線しますが、僕は学校の社会の時間に習った覚えがなかったので、初めて聴いたとき思わずネットで調べてしまいました。CDが発売された当時はGoogleで「スピッツ かえ」くらいまで入れると、「スピッツ 火焔土器」と候補にあがっていたので、みなさん気になって検索していたっぽいです。ちなみに「縄文土器の1種。燃え上がる炎を象ったかのような形状の土器」(wiki)だそうです。へえー。

   おそらく情念が炎のように燃え上がっている様と、情念が湯水のように湧いて器からあふれ出す様とを同時に表現しているのだと思うのですが、火と水という相反するものを使わないと言い表せないくらいに、情念がものすごいことになっているってことですよね。
   火と水、陰と陽、月と太陽。これはもう宇宙的規模の情念と言っていいのではないでしょうか。
   ……どんだけ欲望にまみれているんだ。すごいよ、草野さん。

   あれ?いつのまにか清々しい感じじゃなくなってる。最初のエバーグリーンな感じはどこへ行ったんだろう……
    そんなピュアなリビドーにまみれた「グリーン」。好きな一曲です。