スピッツ「醒めない」アルバム感想

  5月3日にLIVE DVD & Blu-ray『SPITZ JAMBOREE TOUR 2016 “醒 め な い”』が発売されたことを記念して、昨年発売されたアルバム「醒めない」の感想を書こうと思います。
  ほんとは「醒めない」のアルバムの感想はもっと後に書こうと思っていたのですが、僕の手元にLIVE BDが届くまでもう少しかかりそうなので、おさらいも兼ねて、このタイミングで書くことにしました。
スピッツ「醒めない」

「醒めない」は2016年7月に発売されたスピッツの15枚目のアルバムです。ここ最近のアルバム3年周期ルール(?)に則って、前作「小さな生き物」から3年経っての発売です。

  ここ2作ほどスピッツのアルバムは快作が続いていて、「とげまる」→「小さな生き物」と僕の中のスピッツ熱は徐々に上がってきていました。その熱が2次関数的に上昇してびょーんっと圏外にまで飛んで行ってしまったのが「醒めない」でした。
  30代も後半になってこれほど繰り返し聴くアルバムに出会えるなんて思ってもいませんでした。「醒めない」は傑作なのはもちろんですが、それだけではなく、熱いエネルギのかたまりでもあります。

  どれくらい傑作かというと、収録曲を全曲ライブで聴きたいと初めて思えたくらいの傑作です。
  どくれくらいのエネルギを秘めていたかというと、ブログなんて一度も書いたことのない人間に、ブログを立ち上げて、スピッツの全曲感想を書こうと決意させるくらいのエネルギです。
  すごいんだかどうなんだか、傍から見たらよくわからない感じもしますが、とにかくすごいことなのです。

  そして、「醒めない」のどこがそこまで30代男子の心に響いたのかなのですが、これがなかなかうまく書けそうにない。下手に書くとアルバムの良さをチープに貶めてしまいそうですが、がんばって、心に響いた点を上げていってみます。

  一つ目は、「小さな生き物」から引き継がれたバンドサウンド全開な音作りです。ギター、ベース、ドラム、キーボードというライブに近い最小限の構成で勝負してきたというだけで嬉しくなります。だってスピッツはロックバンドじゃないですか。「醒めない」の音は勢いがあり力強く、難しいこと抜きで単純にロックでかっこいいです。

  二つ目は、「こういうスピッツをずっと聴きたかったんだ」という自分のなかのスピッツのイメージを体現したような曲がいくつもあることです。「コメット」「グリーン」「雪風」「こんにちは」がそれです。
  明るくシンプルでただただ聴いていて楽しい曲がずっとほしかったのですが、「グリーン」「こんにちは」でそれが叶いました。また、ひねくれておらずストレートでメロディの綺麗な曲が聴きたい、3分程度の短い名曲が聴きたいという思いが「コメット」と「雪風」でそれぞれ叶いました。

  三つ目は、「王道じゃない変てこりんだけどノリノリなやつ」があることです。これは「子グマ!子グマ!」「ハチの針」「ガラクタ」です。特に子グマさんとハチさんは素晴らしいです。聴いてすぐにぞくぞく来て、にやにやが止まりませんでした。ずっと飛び跳ねていたくなります。

  四つ目は、「存在感がある曲がアルバムの要所々々に配置されている」ことです。これは前半の「みなと」と後半の「ヒビスクス」です。
「みなと」は先行シングルとして聴いたときから魅了され心奪われていました。「ヒビスクス」はクールでかっこいいです。異色ですが、ずっとスピッツの中にあった一面のようにも思います。この曲のおかげでアルバム後半がグッと引き締まっています。

  最後に、14曲全てが個性的でそれぞれ違う色を持っていながら、バラバラになったりぶつかりあったりせず、スピッツの音としてまとまっていることです。統一感があり、聴き疲れしません。これはベテランの技かもしれませんね。
  また、突出した2,3曲がアルバムを牽引しているのではなく、14曲全てがつながって「醒めない」という作品が出来ているというのがいいです。
  今の人たちはアルバム単位で音楽を聴いているのかわかりませんが、やはりアルバムで聴くとなると統一感や曲ごとのつながりが大事になってきます。


  がんばって書こう書こうと思って書いていたら細部に入り込んでいってしまった気もしますが、そんなチマチマとした細かいことではなくて、もっと単純に楽しいのです、このアルバムは。
  そして、嬉しいのです。スピッツ、やったー。今日も元気だ、明日もがんばるぞー。そんな感じ。

「醒めない」はもっともっといろんな人に聴いてもらいたいアルバムです。若い人にももちろんですが、特に自分と同年代で「ハチミツ」や「空の飛び方」しか聴いたことがない人たちに。
  スピッツは変わらないままずっと進化し続けていますから!
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  おすすめ曲を書くのは多すぎて困ってしまうので、シングルを除く3曲のみという制限を設けるとしたら、「ハチの針」「ヒビスクス」「こんにちは」かな。明日になったらまた変わっているかもしれませんが。