君になりたい ~スピッツ「ヘビーメロウ」感想

「ヘビーメロウ」は「サイクルヒット1991-2017」のDisc3の13曲目に収録されています。

   今年(2017年)の4月にスピッツの新曲が「めざましテレビ」のテーマソングになると聞いたとき、スピッツの歌が朝から流れるなんていったいどんな感じなんだろうとドキドキしました。スピッツのメンバーが朝の歌を歌うイメージがあまりなかったので。
    聴いてみると、「ヘビーメロウ」はローでもハイでもない、ニュートラルややハイなテンションだったので、半分寝ぼけた朝にも、しゃっきり動き出したい朝にも合う、朝一番に聴くのにぴったりな曲だなと感じました。
   といっても、うちの朝のニュースは「めざましテレビ」以外の番組に固定なので、最初に流れた日に聴いて以来、朝に聴くことはないのですが。汗

   また、11、12月は出張でホテル暮らしが続いたので、毎日Walkmanで「ヘビーメロウ」を聴きながら、ホテルから会社までの道のりを歩いて通いました。普段は自転車通勤なので音楽は聴かないものですから、「ヘビーメロウ」のリズムで適度にテンションを上げながら歩くのは新鮮で楽しかったです。
    通勤前あるいは通勤中に聴くのによい歌だなと思いました。


   そんな「ヘビーメロウ」のなかで、最も印象に残るのは、サビの頭の歌詞なのではないでしょうか?
「君になりたい 赤い服 袖ひらめいて」
   君に触れたいでもなく、君を歌うでもなく、君だけを描いているのでもなく、「君になりたい」ですよ。君になっちゃうんですよ。すごくないですか!?
   しかも、普通だったら、夢に向かって一生懸命な君や、ポジティブで前向きな君や、優しい君といったふうに、心や精神的な部分をアピールすると思うのですが、「ヘビーメロウ」の場合は、「赤い服(とその袖)」に焦点を当ててきます。赤い服の袖がひらめくというのが、なんとも鮮やかです。
   思わず「君になりたいって、身体的に君になりたいんかい!」と、ツッコミを入れたくなります。いや、女装したいとかそういうことではないことはもちろんわかるんですけどね。なかなか思い切った新鮮な歌詞だなと思います。
   中途半端に精神的な面を持ち上げるよりも、赤い服という身体的な(物理的な)特徴を描くことで、君の存在のリアルさが増しています。瀟洒な赤い服を着て颯爽と歩く君に憧れを抱いているのが、ひしひしと伝わってきます。

   それにしても、赤い服の君はいったいどんな女性なんでしょう。
   「ヘンテコな女神」とあるから、強くて美しいけどちょっと天然なのかなと思いますし、「広い空で遊ぶ術を授けてくれた」とあるから自分にないものをきっといっぱい持っているんだろうな。そして「赤い服」がよく似合っている。
   草野さんの歌に出てくる女の子って年下(でも主導権は”君”が握っている)のイメージが強いのですが、「ヘビーメロウ」の女性は年上のお姉さん(先輩)な気がします。大人の魅力に溢れてそう。
   こんな人が近くにいたら、きっと「花は咲」くし、勢いで「たしかな未来」を「いらない」と言っちゃいそうです。ーー恋ですね。

* * *
   さて、誰も気づかなかったと思いますが、9月13日に書いた「五千光年の夢」の感想から、実はスピッツのアルバムを年代順に追って、1曲ずつ感想を書いていたのでした。(具体的には1st「スピッツ」→15th「醒めない」、ミニ「オーロラ」、スペシャ「花鳥風月」→「おるたな」、「サイクルヒット」の順)
   途中からスピッツの感想の更新は週1のペースになっていたので、「五千光年の夢」を書いたころはまだまだ暑かったのに、今は雪まで降ってすっかり寒くなりました。それでもなんとか年内に最新アルバムの「サイクルヒット」まで完走できてよかったです。

   次からはまた元通り、好きな順に曲をピックアップして感想を書いていきます。ただ、しばらくは感想記事の少ない「フェイクファー」「醒めない」の曲を中心に書こうかなと思います。