最後の離島で ~スピッツ「夢じゃない」感想

「夢じゃない」は「Crispy!」の6曲目に収録されています。

   アルバムが発売されてから4年後の1997年に、ドラマの主題歌としてシングルカットされました。派手さはないけれど心に残る名曲です。アルバムだけで埋もれるには惜しいので、ドラマの主題歌に選ばれて世に広まってよかったと思います。
 「夢じゃない」は過去の曲であるにもかかわらず大ヒットしました。その前年に「空も飛べるはず」もリバイバルヒットしていたので、当時は、スピッツの過去作には一体どれだけの名作が埋もれているんだろうと、スピッツという海の深さに呆然としたものです。
   結局、過去作からのシングルカットや再発売はその後ありませんでしたが、「プール」や「日なたの窓にあこがれて」などは、97,98年ごろに世に出ていたら、そこそこヒットしたんじゃないかと思います。

   さて「夢じゃない」の好きなところは2つあります。

   1つ目は、Aメロの「あたたかい場所をさがし泳いでた 最後の離島で」です。
   孤独な魂が「君」という安らぎの地を求めてさまっている。それを「泳ぐ」や「離島」という言葉を交えて表現しているのが、素敵です。
   また「リトウ」という音の響きも特徴的です。音だけを聞いてもそれが「離島」だとすぐにわからない、そんな普段あまり使わない熟語を歌詞に入れてくるというのが当時はとても新鮮に感じられました。(今の曲は割と難解な熟語でも平気で歌詞のなかに入れてくるので、若い人は「離島」くらいじゃビクともしないのかもしれませんが)

「離島」がアクセントになって、Aメロが曲全体のイメージをけん引している。シングルジャケットのインパクトもあるのかもしれませんが、このAメロは「夢じゃない」という曲を象徴する部分だと思います。
「夢じゃない」のシングルジャケット
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   2つ目は「いびつな力で守りたい どこまでも」です。
「守りたい どこまでも」というタフでかっこいい言葉と、「いびつな力」というスピッツらしいちょっとひねくれた言葉のmixが最高です。強いような弱いような、がんばっているけど負けそうな、だから応援したくなる、そんな絶妙なバランスの宣言が、孤独な心に優しく刺さります。

   いつか彼女ができたら、俺もいびつな力で彼女のことをどこまでも守り続けるんだ!なんて、心に誓ったりもしていましたが、結局彼女ができたのは、それから10年くらい後のことでした。10年間もずっと最後の離島で泳いでいたわけです。--カナヅチですけど。