蝶が羽ばたき始めるような ~スピッツ「聞かせてよ」感想

「聞かせてよ」は13thアルバム「とげまる」の10曲目に収録されています。

   激しいロックナンバーの「TRABNT」の後に、「聞かせてよ」は優しく静かに始まります。
   歌詞のなかに「蝶」という言葉が出てくるせいかもしれませんが、この歌には蝶のイメージがあります。さなぎから羽化した蝶が風に舞って羽ばたいていく。そんな小さくてかよわい蝶の誕生の物語を想像してしまいます。
   Aメロの静かな音作り(さなぎ)と、サビで一気に盛り上がるメロディやサウンド(蝶の羽ばたき)もこのイメージに一役買っているかもしれません。颯爽と流れるサビは風の中を羽ばたいていくような気持ちよさがあります。

    歌詞を見ると、まずAメロでは弱く臆病な自分が小さな世界に閉じこもっていることを歌っています。「小さすぎる窓から 抜け出せるときが来る」「臆病なこのままじゃ 影にも届かない」などです。
   そして、サビでは外の世界にほんの少し踏み出します。「聞かせてよ 君の声で 僕は変わるから」「新しい甘い言葉で 愚かになりたい」ーー変わるきっかけが、君の声というのがスピッツらしいです。ぶれないですよね。

   サビの最後は「ありふれた愛の歌 歌い始める」です。外の世界に出て歌い始めたところで物語は終わります。そのまま歌い続けるのか、それとも歌うことをやめて変われないままなのかは、また別の物語となります。余韻のある終わり方で好きです。

   最近は、「幻のドラゴン」→「TRABNT」→「聞かせてよ」→「えにし」の流れが好きでよく聴きます。テンポもよく、ランニング時のミュージックにもぴったりです。