モテない男の希望の歌 ~スピッツ「恋する凡人」感想

「恋する凡人」は13thアルバム「とげまる」の4曲目に収録されています。

   まずタイトルが秀逸です。なにせ「恋する凡人」ですよ。恋のエキスパートじゃなくて、凡人ですからね。モテない自分にしたら、もうタイトルだけで、合格!と言いたいです。フラれて片思いばかりの、ぱっとしない男の子を想像し、勝手に「うんうん」とうなづきます。

   自分の記憶が正しければ、「とげまる」や「つぐみ」(恋する凡人のライブ版が収録されている)の発売前に、ライブ会場で聴いたことがあり、初めて聴いた瞬間から、ビビッと来ました。
   タイトルは「凡人」ですが、曲は疾走感のあるロックナンバーで非常にかっこいいです。イントロやサビの部分のギターの音が厚いのも良いです。ライブでかかるともの凄く盛り上がります。

   また、歌詞は意外と、というと失礼ですが、前向きで、うじうじしたところがありません。「やり方なんて習ってない 自分で考える」「『変わりたい』何度思ったか 妄想だけではなく」「消えたフリした炎でも 火種は小さく残ってた」など、恋が成就するかどうかはともかく(なんかダメそうな気がしますが)、決して立ち止まらずに立ち向かっていきます。

   そして何よりサビがかっこいい。冒頭の歌詞は「今走るんだどしゃ降りの中を」です。メロディに上昇感があり、歌詞の中に「走る」という躍動感のある単語が出てくるため、聴くと必ず気分が高揚します。
   雨に打たれてとぼとぼ歩くのではなくて、たとえ「明日が見えなくても」走っていく。それもただ雨の中を走るのではなく、「ロックンロールの微熱の中を」です。
   モテなくても、凡人でも、このガムシャラな感じ、いいですよね。モテない男の希望の歌です。がんばろうって気持ちにさせてくれます。(このときすでに自分は結婚していたので、できれば学生時代に聴きたかった!)

   他にも好きな歌詞はいろいろあるのですが、一つ上げるなら「君みたいな良い匂いの人に 生まれてはじめて出会って」です。唐突に「良い匂い」とか言い出すあたりに、草野さんのフェチズムが感じられて好きです。

   あと、雨にずぶ濡れになりながら駆けている草野さんを想像すると、ちょっとニヤニヤしてしまいます。絵になってそうですよね。うらやましい。