インディゴ地平線は冬の曲なのか?

武田鉄矢のカン違い

   みなさんは歌や詩や小説の解釈を間違えたり、通説とは異なる考えた方をしていたりしたことはありますか?
   武田鉄矢は、若いころに愛読していた中原中也の詩が、恋人への恋情をうたっているものとばかり思っていたら、実は我が子への愛を書いたものだったと後に知ってがっかりした、ということをエッセイのなかで書いていました。(ちなみに、自分も子供が出来て初めてその気持ちがわかった、と話は続きます。)
   詩のように短い表現の場合、背景や状況を知らないとときどきとんでもないカン違いがあったりするものです。

アメリカ大陸をバイクがいく

   で、今回の話です。
   僕はスピッツの「インディゴ地平線」という歌を、いつのころからかずっと夏の歌だと思っていました。
   イントロのギターのヘビーな音からして、灼熱の太陽に焼かれたアスファルトにカゲロウがユラユラと立っているように感じますし。歌の内容とジャケット写真から受ける印象は、熱いアメリカ大陸をバイクで横断する過酷な旅といったものです。

   といっても、歌詞にはアメリカもバイクも出てこないんですけどね。なんでアメリカなのかというと、たぶん、こんな連想をしてしまうからだと思います。「インディゴ」→「インディアン」→「アメリカ大陸」。ダジャレかよって、すみません。
   そして、ジャケットのバイクの写真から、「アメリカ横断」という空想がふくらみ、「アメリカ横断」→「大自然、西部劇」→「砂漠」→「真夏」となって、夏のイメージにたどり着きます。

   夏のアメリカ大陸横断という空想は「君と地平線まで 遠い記憶の場所へ」という歌詞に合っているように思います。
   果てしなく続く青い空のその向こうを目指す旅。ーー真夏の大陸こそがその舞台にふさわしいです。

   ただ、サビで「凍りつきそうでも」という歌詞が出てくるのだけは引っかかりました。でも、実際の季節というよりは精神的な状況だろうということで見て見ぬふりをすることにしました。

そうだ、映像で観てみよう

   とはいえ、インディゴ地平線の感想も書いたりしたので、本当に夏なのかちょっと気になります。そこで、ネットで調べてみると、圧倒的に「冬」と思っている人が多い!!とういか、冬の人しかいない。
   ーーあれ、自分、変わっているのかな? いやいや、解釈は人それぞれだから。うーん。しかしなー。(ちょっと焦る)
   そうだ、インディゴ地平線はミュージックビデオも出てたはずです。ちょうどMVランキングもやっているし、YouTubeで観てみよう!古いDVDを引っ張り出さなくていいなんてほんと便利な時代ですよ。ということで映像を確認してみました。

   その映像がこちら↓


   めっちゃ最初から防寒着を着こんでいるじゃないですか!!
  --冬だったのか OTL 

  おかしいなぁ、VHSで「インディゴ地平線」は観ているはずなのに……いつから、夏のイメージにすり替わったんだろう。
   覚えている限り、ここ10年くらいは「夏」のイメージで聴いていました。

夏の北海道と地平線

   たぶん、夏をイメージしたくなる理由の一つに、社会人になってから長期休暇によく自転車で一人旅に行くようになったというのもあると思います。当然、それは夏なわけで。

   アメリカでもバイクでもないんですが、北海道に自転車で行ったときの写真がこちら。
   ほら、雲の浮かんだ空の下に地平線が広がっています。真っ青な空とはいかないのが残念ですが、こんな真っ直ぐな長い道を自転車で走っていると、自然と頭の中にインディゴ地平線が流れてきます。
   夏の旅とインディゴ地平線。決して悪くないマッチングだと思いませんか?
さるふつ 2010.08

北陸の冬空が悪い

   しかし、それだけでもないように思います。これだけ、大勢の人が冬と思い、そして映像までも明らかに冬のイメージの歌なのに、なぜ自分にとっては夏なのか?

「インディゴ・ブルーの果て」という歌詞が出てきますが、これはきっと青い空の果てということですよね。どこまでも広がる空の青。その青い光の先に、君と……
   青、青、青い空!??--北陸の冬に青色なんて存在しないですよ。めちゃめちゃ灰色ですが!?
   そこかー!、太平洋側に住んだことがないと「インディゴ・ブルー」→「青空」→「快晴」→「冬」なんて連想が起きるはずもなく、北陸人の自分(特に石川県民)にとっては、「冬」→「曇り空」→「灰色」ですよ。
   北陸の冬は、鍋の底に入れられて、上から重い蓋で閉じ込められたような天候ですもん。澄み切った青空なんて、冬の専売特許ではなくて、むしろ夏の田舎の無人販売的なもんじゃないですか。
   ……生まれた環境(場所)という大前提が違っていたのか OTL
   インディゴ・ブルーな冬なんて想像つかないですよ。まあ、自分の思い込みが激しすぎるのもあるんでしょうけど。


   ということで、ちょっといつもの感想と違う企画ものっぽいことをやってみたかったのと、石川県人のお約束(?)でもある「冬の天気が悪いネタ」を使いたかったのとで、だらだらと書いてみました。
   最後は、カミュ「異邦人」のムルソーが法廷から立ち去るときに吐いた「太陽のせいだ」という台詞よろしく次の言葉を残してしめたいと思います。

「全ては北陸の曇り空のせいだ」