スピッツ「インディゴ地平線」感想

   7thアルバム「インディゴ地平線」の3曲目に収録されています。タイトルチューンです。

   重く粘りつくようなサウンドが印象的です。
   真夏の太陽に熱せられて、遠くの道の上にゆらゆらとカゲロウが立っているような。足元を見ると、アスファルトがドロドロに溶けてコールタールが流れ出しているような。そんな鈍重で重苦しいイントロで幕を開けます。

   歌詞には「バイク」は出てきませんが、タイトルチューンということもあって、どうしてもジャケットのバイクを意識してしまいます。ひたすら長い道のりをバイクに乗って延々と進んでいく。どこまで行っても地平線が見えていて終わりが来ない。そんなイメージの歌です。

   この歌の中で僕が一番好きな歌詞は「逆風に向かい 手を広げて 壊れてみよう 僕達は希望のクズだから」です。
   特に、「希望のクズ」という表現が好きでした。クズっていうとちょっと嫌な感じですが、星屑という言葉もあるし、頭に「希望」がついて「希望のクズ」となると、なんとなく、くすみながらもかすかに光っていそうな気がします。

「僕達は希望のクズだから」この言葉は、十代のころのささやかな支えでした。
   つまらない日々が続いて、上手くいかないことばかりで、何もない自分が嫌で嫌で。それでもきっとこの先には何かあるだろう、希望はあるだろう、僕は希望のクズだから。ーー結局、どうだったろう、何かあったかなぁ。まあ、少しはあったと思います。

   最初に、終わりが来ないイメージと書きましたが、アウトロは、少しだけ上に上っていく感じで終わります。上昇気流が吹いて、体が少しだけ軽くなったような。ずっと地面ばかり見ていたけれど、あるとき顔を上げたら、大きな鳥が高く高く空を飛んでいて、自分の行く道を示していてくれたような。
   旅は続くし、地平線はまだまだ遠いけれど、かすかな希望を感じさせる終わり方です。

   この流れで4曲目の「渚」に続くのが素敵です。地平線から渚へ。旅の最終地点が”海”というのも映画っぽくていいですよね。