スピッツ「船乗り」感想

   カップリング集第2弾の「色色衣」の9曲目に収録されています。

   イントロではベースが効いていて低音がどんどんっと響きます。ドラムのリズムも力強いです。Aメロのメロディや、途中のハーモニカもどこか酔った調子です。「船」や「海」に関わる歌詞ももちろんでてきますが、音作りだけでも、小舟に乗って荒波に揺られている感じが伝わってきます。

   Aメロでは波に揉まれてゆらゆらしているイメージですが、サビではいっきに時化から抜け出したような疾走感にあふれます。このAメロからサビへのつなぎかたは、ライブだとすごく盛り上がりそうです。(なかなかライブでは聞けませんが)

   歌詞に目を向けると「始まりのときめき 俺は本当に生まれていた!」という詩が素敵です。「生きていた」じゃなくて、「生まれていた」というのがまたいい。
   力任せに漕ぎ出して、鳥と一緒に歌って、始まりにときめいて、思わず叫んだ言葉「俺は本当に生まれていた!」
   なんとなく、「生きていた」よりも「生まれていた」の方が、生まれた瞬間の生(なま)の手触りみたいなものが感じられて、リアルな気がします。

   そして「遠いところまで君を連れていく」というサビの男らしい台詞と、その後の「風に尋いてくれ」という大雑把でいい加減な感じ。--結局、他人任せというか風任せというあたりは「鳥になって」「青い車」のころから変わっておらず、安心(?)のスピッツを見せてくれます。