スピッツ「ウサギのバイク」感想

   2ndアルバム「名前をつけてやる」の1曲目に収録されています。
   切ないけどわくわく感あふれるアルペジオと、草野さんの澄んだスキャットが特徴的です。

   アルペジオのギターから始まり、ドラム、ベースと音を積み重ねて、次はボーカル!と思いきや長いスキャットで歌詞はいったんお預け。スキャットが終わって、次こそは歌が来る!と思ったら、間奏になり、またお預け。となかなか焦らしてくれます。演奏も素敵なのでこの焦らしはご褒美として、存分に楽しみます。
   もう楽器とスキャットだけで十分素晴らしいので、これで終わっていいんじゃないかとうっとりし出したころに、ようやく草野さんの歌が始まります。短い歌詞ですが、世界観もあって、とても素敵です。やっぱり、歌もあってよかったと思いなおします。

   歌詞は短いため、書き出すと全部載せてしまいそうになるので省略しますが、出だしからして自分好みです。「ウサギのバイクで逃げ出そう」「優しいあの娘も連れて行こう」ーーこういう逃避行ものはなんかいいですね。スパイダーもそうですし。
   いや、別に若いころ駆け落ちしたかったとかそういうわけじゃないのですが。なんだろ、今いる世界が嫌だったから逃げ出したかったのかな。「世界」というのが”社会”なのか”自分”なのかはあいまいですけれど。

   ところで、「ウサギのバイク」ってどんなバイクを想像しますか?
   僕はずっと、フロントに大きなピンクのウサギのワッペンが貼られた原付を想像してました。あるいはウサギの耳がハンドルになったハーレー風の原付です。(何にしろ、中型・大型じゃなくて50cc)
   いま、それとは別のものが頭に浮かびました。バイクを運転しているのが実はウサギで、僕とあの娘が、ウサギの運転している原付の後ろにつかまって、三ケツで逃走しくというものです。小さい原付に三人も乗るのはどう考えても無理がありますが、それはそれでドタバタしていて楽しそうです。
「鳥になって」や「青い車」みたいに、自分じゃなくて誰か(ウサギ)に連れて行ってもらうスタンスなのもスピッツらしいですし。

   それから、こんな冒険譚をちょっと思いました。
   ウサギ、僕、あの娘の3人パーティで、バイク、戦車、飛行船と次々に乗り継ぎながら、氷の丘を越えて、幻の森を抜け、マンモス広場で決闘し、伝説のギターや黄色い花や機関銃を集めながら、最後の魔女に会いに行く。ーー面白いかどうかはわからないけれど、とりあえず挿入歌は全部スピッツで。