スピッツ「タンポポ」感想

   1stアルバム「スピッツ」の7曲目に収録されています。
   先日、子どもと家の近くを散歩していたら、道端にタンポポの綿帽子が揺れていました。子どもが息を吹きかけると白い綿毛が光のなかに飛んで行って、”ああ、5月はタンポポが旅立つ季節かぁ”とぼんやり思いました。

   スピッツの「タンポポ」はスローでのんびりとした曲です。アップテンポでテンションの高い「テレビ」の後に配置されているせいもあり、少し眠くなります。しかし、中身はダークです。歌詞を読むと憂鬱になります。

   Aメロではネガティブな言葉で、重く壊れた世界を造り出していきます。「けむたくてなかには入れない」「山づみのガラクタ」「生ゴミ」「逃げ出してつかまった最後の冒険」「大きな傷」ーー書き出すだけで憂鬱になりますね。
   そしてサビでは失恋かもしくは何か大きな失敗をしたことを想像させるようなストーリが語られます。「くるくる回る……空も大地も」「もう君に会えない」「ふんづけられて また起きて道ばたの花 ずっと見つめていたよ」
   例えば、失恋のショックで飲みすぎてしまい、目の前がぐるぐる回ってアスファルトに倒れこむ。その拍子に頭をどこかにぶつけて気を失い、また目を覚ます。だけど体が動かない。頭から流れている血を止めることもできずに、道ばたに咲いているタンポポをじっと眺めている。そんな光景が頭に浮かびます。

   今なら、タンポポなんか見ていないでとっとと歩けー!と大声で叱咤してそうですが、十代二十代のころの自分にはちょっと酷かな。
   自分もよく飲みすぎてバス停に頭ぶつけて流血して倒れこんだりしてました。むかしは、なかに入れなくて、逃げ出して、傷ばかりいっぱいもらっていたような気がします。
   ああ、そう考えると、「タンポポ」はぐいぐいと昔の傷口をえぐってきますね。地味な印象の曲ですが、意外と破壊力のある青春ソングかもしれません。