スピッツ「ホタル」感想

  スピッツの新曲「ヘビーメロウ」の発表から一日経ちました。(昨日の記事はこちら
  ネット上のファンの方々のブログやTwitterを見ているとおおむね好評のようですね。発売日の発表はまだのようですが、夏になる前には発売されるのかな?僕も楽しみです。

  今日はシングルつながりで(強引?)、僕が初めて買ったスピッツのシングル「ホタル」の感想を書きます。9thアルバム「ハヤブサ」の10曲目にも収録されています。
  スピッツ初の12cmマキシシングル盤ということで、普通のシングル盤よりも1曲多い3曲も入っていて、当時お金のない貧乏学生だった僕は、ラッキーという気分で購入しました。

儚くて切ない。ベタだけど、この歌にしか出せない世界観があるロックナンバー

  当時、草野さんが「今までのスピッツと変わらないので、シングルとして出すことを迷っていた」というようなことを雑誌で言ってました。
  綺麗なアルペジオ、切なく儚い歌詞、ハイトーンのボーカル、シンプルで短くまとまった曲構成(サビスタートで、2回目のAメロ直後に間奏という構成はスカーレットと似ています)。たしかに王道のスピッツといえます。
  でも初めて「ホタル」をラジオで聴いたときから、心にすうっとしみこんで、惹かれるものがありました。王道(ベタ)といえば王道(ベタ)なのですが、他にない何かがあります。

 歌詞やメロディは儚くて脆そうですが、サウンドは芯があってしっかりとしています。曲全体の印象は、ホタルというタイトルの通り、暗い闇のなかにぽっと小さな光が灯るようです。しかしそれをバラードではなく、疾走感があるマイナー調のロックナンバーに仕上げているというのも特徴的です。
  ベタなようで、後にも先にもないこの曲にしか出せない世界観が存在していると思います。(「さらさら」はやや近いものを感じますが、「ホタル」から10年以上も間が空いています)

  また、当時の僕は、優しい歌よりも、切なくて胸が痛む曲に、より強く惹かれていました。
  ひとつ前の秋に、大学の図書館で知り合った2つ年下の子に片思いをしていて、その恋は(いつも通り)実りそうになく、癒されるよりも、痛切な痛みを代替してくれるものを望んでいたんだと思います。
「時を止めて」「すぐに消えそうで悲しいほどささやかな光」「鮮やかで短い幻」という歌詞が妙に心に響いたのを覚えています。

  そんな個人的な片思いの状況と曲のもつ儚さとが重なって、「ホタル」は思い入れもあり、大好きな曲の一つです。
  大学生のころは、一人暮らしのアパートで夜「ホタル」を聴きながら、安い酒を飲んで、何かに焦がれたり、恋を悲しんだりしてました。かっこ悪いですが、まあ、ビバ!青春って感じですね。……うん、無理やり美化しておきます。

  ところで、サビの「甘い言葉 耳にとかして 僕の全てを汚してほしい」という歌詞。これを歌っても嫌味じゃない「草野マサムネ」がほんと嫉妬したくなるくらいうらやましかったです。
  だって、普通の人が(つまり僕が)歌っても、いやお前もう薄汚れてるだろってつっこまれるのがオチじゃないですか。純粋無垢な感じの草野さんだからこそ納得できる歌詞ですよね。(いや、でも結構エロい歌詞もいっぱい歌ってるはずなんだけどなぁ)


「ホタル」はメンバーの予想に反して(?)、ファン人気も高いみたいで、ちょくちょくライブでも歌ってくれるのがうれしいですね。
  草野さんが「キーの高いことろがずっと続くから辛いけどがんばって歌います」のようなことをMCで言っているのを2度ほど聞いたことがあります。
  けれど、素人の自分にはロビンソンの方がよほどキーが高いように思えるし、歌声を聴いてても全然余裕だと思うのですが、プロの耳には、納得できないものがあるんでしょうね。次元の違う世界の話に聞こえます。

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  学生のころ、一足先に就職した東京の友達の家に遊びに行ったときに、彼の部屋で「ホタル」のPVをYouTubeで観たことがあります。
  発売前のシングル曲の映像をインターネットで見れたことに、すげーっと驚いて、画面に食いついて観ていました。2000年ごろは自宅でインターネットを見れる環境があること自体がまだ珍しかったのですね。PVも最終版と違って炭鉱のシーンのないものでした。
  あれから15年以上経ち、ネット環境はずいぶんと進歩したなぁと今ふと思いました。