スピッツ「うめぼし」感想

  1stアルバム「スピッツ」の11曲目に収録されています。

  シングル「スカーレット」のカップリングにライブバージョンが収録されているので、そちらの方が有名かもしれません。
  アルバム版はギター1本での弾き語りです。

「うめぼし食べたい うめぼし食べたい 僕は今すぐ君に会いたい」というシンプルなサビは一度聴いたら、耳から離れなくなります。
  タイトルだけは奇を衒って、中身は普通のラブソングーーなんていうことはなく、サビにもしっかり梅干しが詰まっているところが、草野さんらしいです。
  一回聴いただけだと、「梅干し食べたいってどうなのよ」と笑ってしまいそうになりますが、二回も聴けば、真剣に「君に会いたい」と歌っていることが伝わってきます。

  夜中にお腹がすいて突然梅干を食べたくなるように、君に会いたくなる。山盛りの梅干しを想像してよだれが出てくるほどに、君に会いたくなる。アツアツの白ご飯の上に梅干しを乗せて食べたいのに冷蔵庫を開けても梅干しがない、君に会いたくなる。
  わかります!好きな子に会いたくなる気持ちは梅干しを食べたくなる気持ちに似ている。いや、まあ他のたとえでもいいような気もしますが。それでも、ここは梅干し一択なのが草野さんなんでしょうね。……まあ、僕も、梅干し好きですし。毎日食べてます。

  他には、「穴の空いた長靴で水たまりふんづけて」のくだりも好きです。十代のころはこんな風に無邪気にはしゃいで、涙が出るほど笑いころげられたらどんなにいいだろうと思ってました。暗い所にいて毎日鬱々と過ごしていたので。

* * *
  先日、ふとこんなことを思いました。彼女の部屋に実家のおばあちゃんから送られてきた梅干しがいっぱい置いてあって、「うめぼし食べたい」は「彼女(君)の部屋に遊びに行きたい」という意味だったらおもしろいなーって。

  その彼女はすごいおばあちゃんっこで、半年に一回くらい届くおばあちゃん手作りの梅干しをすごく楽しみに待っている。そして、友達なり彼氏がなりが遊びに来ると、必ずお酒の肴に梅干しを出すんだけど、むかしの人が作る梅干しだからすごく塩辛い(僕ん家もそうでした)ので、食べた人はみんな、うーって口をすぼめておかしな顔をする。それを見て彼女がけらけらと子供みたいに笑うんですね。
  そんな彼女のすがたを見るのが好きで梅干しを食べるのを口実に彼女の部屋に押し掛ける、みたいな。
  そういうのも楽しそう。おばあちゃんっこの女の子ってかわいらしいなぁって。まあ、勝手な妄想なんですけど。