スピッツ「夏の魔物」感想

 1stアルバム「スピッツ」の10曲目に収録されています。
 アップテンポなロックナンバーです。音数が少なく、ギターの音も乾いた感じで、渋いかっこよさがあります。

ほんとうに夏の魔物に会いたかったのだろうか

   まず「古いアパート」という歌詞を聞くだけでフォークソング的な世界観が頭によぎります。
「魚もいないドブ川」「折れそうな手」「追われるように」「長く伸びた影がおぼれたころ」「クモの巣が光ってた 泣いてるみたいに」と歌詞はどれも虚無的、というと大げさかもしれませんが、今にも崩れてしまいそうな脆さがあります。
 彼女のアパートに行って、自転車で二人乗りして、いっしょにいるのに、あまり幸せそうじゃない。夏の終わりを感じさせます。

 一番気になるのは「夏の魔物に会いたかった」というところです。夏の魔物とは何なのか。なぜ会いたいのか。いや、そもそもそれは本当に心から会いたいものなのか。願っていたものなのか。
 なんとなくですが、本当は会いたくないもの、会わずにすむならその方がいいもの、のように思います。だけど、会わないままではいられない、会わざるをえない。
 曲調のせいか、夏の魔物には不吉な影を感じてしまいます。「殺してしまえばいい」とぞっとするようなことも言ってますし。

 夏が終わるころ、「君」との別れが訪れる予感があります。もしも夏の魔物に会えたら別れずにすんだのかもしれない。それでも決してハッピーエンドにはたどり着けなかった気がします。遅かれ早かれ、違う形の別れが待っていたような。

 好きなナンバーですが、自分が恋をして女の子とつきあうなら、もっとだらだらとまったりとした恋がいいですね。

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|♪ 夏の魔物(スピッツ)

 間奏の長いギターソロが、かっこいいです。スピッツのギターソロのなかでも上位に入り込むくらい好きです。むかし、アコギでコピーして練習してました。後半で挫折しましたが。

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