【感想】リーガルリリー「kirin」|歌詞も声もサウンドも良くて胸がキュッとなる

 2024年にリリースされたリーガルリリーのアルバム「kirin」を聴いています。

 最近、音楽サブスクでレコメンドされて知りました。

リーガルリリー「kirin」

 リーガルリリーは女性ボーカルのロックバンドです。

 メロディは切なく、サウンドは心地いい。歌声は、ちょっと甘ったるく、ちょっと気だるく、そしてちょっと力強い。

 そして、ちゃんと間奏があるのがいい!ギターとベースが楽しそうに演奏している。(ボーカル兼ギターなので、ライブでギターソロを誰が弾いているのかは気になりますが)


 「kirin」は何度もリピートして聴いていますが、どの曲も好きです。

 アルバム全体の曲順やクオリティがすばらしく、このまま1曲目から最後までライブにしても成立しそうなほど。

 特に序盤の①「天きりん」〜③「17」と、後半の⑨「海月星」〜⑫「ますように」の流れは最高です。


 それにしても歌詞がいい。切なくて、胸が苦しくなるような言葉が多い。

 例えば②「キラキラの灰」の「キラキラのハイになって踊った 重力に逆らえずに踊った」。

 「灰」と「ハイ」をかけているのがうまいし、「重力に逆らって」ではなく「重力に逆らえずに」踊る、という表現がおもしろい。自由に舞うのではなく、重力を受けたまま踊る——そうか、そうかもしれないなと思わされます。


 他にも、

  • 「正解の世界で見上げた」「天きりん 僕をここから出してくれ 出してくれ」(①天きりん)
  • 「プラスチックの消しゴムで消した音が 教室内で暴走中」(③17)
  • 「あぁ カムパネルラ せいぜい60W この町の光になった」(⑩60W)

 など。

 わかるようでわからないギリギリの感覚を突いてきて、それでいて切ない。心を揺さぶられ、胸がキュッとなります。


 特にラストの「ますように」は圧巻。

 歌詞も、メロディの展開も、ずるいくらい良い。

 「ますように」というフレーズを呪文のように繰り返しながら、だんだんと高まっていく様子に痺れます。


 冒頭の「僕は君よりも暇だからさなんでも合わせられるよ」から、ラストの「とばすように 残像を背景にして僕らここにいられますように」まで、孤独と誰かを求める心が交錯しているようで胸に迫ります。


 ああ、十代のころ、そういえばこんな世界にいたような……そんな気持ちになります。

 そしてその感覚は、切なさや痛みとは逆に、今の僕の心を潤してくれるのでした。


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