今年の冬、金沢ビーンズ(大型書店)に行くと、「第1回 北陸文庫大賞」という特集が組まれたブースがありました。
ちょうど読んだことのない作者の本を読みたいと思っていたので、そこで一番でかでかと積まれていた本を手に取り買って帰りました。
それが八重野統摩の「ペンギンは空を見上げる」です。
叙述トリックを使っているので内容を大きく紹介できませんが、帯に書かれている書店員さんのコメント「ミステリの形で浮き彫りになる真実とともに、少年が憧れたガガーリンの言葉と繋がる瞬間が、とても好きです」「『そういうことだったのか!』とわかったところから、心がギュッとなって、ずっと泣きながら読みました」がほぼ全てを物語っています。
小学生のハルくんはなぜ宇宙を目指すのか?彼の過去に何があったのか?そして彼は物語のラストで宇宙を写すことができるのか?
ハルくんの過去のこと、転校生の鳴沢イリスとの関係、三好との友情、クラスのいじめっこの苅屋さんのことなどなど、物語は宇宙以外にも様々な要素をはらんでいます。
しかし最後はハル君が打ち上げた風船からの宇宙撮影、ただその一点に収束していきます。
他の様々な問題など宇宙から見れば取るに足りないものだと言わんばかりに、宇宙の映像に全てが吞み込まれいく。ラスト数ページの文章から描き出される映像はとても美しいです。
このラストの情景を体験するためにこの物語は存在する、と言っても過言ではないです。
そして、目標を持ち努力をすること、かけがえのない仲間を持つことはなんと尊いことか!
ハル君にはこの先も、困難を乗り越えて夢を実現してほしい、と切に願います。
* * *
さて、最近本屋にあまり行かなくなったし、本屋に行っても既知の作者の本しか買わなくなりました。
新しいものを発掘しようという気力がほとんどなくなってしまいました。
そんななかで「北陸文庫大賞 」という文学賞をみつけました。
第1回の受賞作(今回読んだこの作品)は個人的にアタリだったので次の第2回も要注目です。
こういう地元の賞は、本屋に行くきっかけにもなるし、地元で多少なりとも話題を作れるし、なかなか良いものだな、と思いました。
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