ヨルシカ「幻燈」ではレコードの針を落とせない

    ヨルシカの音楽画集「幻燈」を買って、見て読んで聴きましたので、感想を書きます。

ヨルシカ「幻燈」と音楽再生中のスマホ

外観

   8250円もするだけあって装丁は立派です。

ヨルシカ「幻燈」 表紙

ヨルシカ「幻燈」 裏面


   サイズはほぼレコードと同じくらいです。

ヨルシカ「幻燈」 とレコードのサイズ比較


   サイズが大きいと所有欲を満たしてくれますが、保管の際に場所を取るのでちょっと困りますね。


   では次に音楽を聴いてみましょう。


音楽を聴く

「幻燈」にはCDが付いていません。

   代わりにスマホ又はタブレットのAR機能を使って音楽を聴きます。


   やり方は、まず画集の中にあるQRコードから専用サイトに飛び、シリアルナンバーを入力します。

   すると、下の写真のように第1章と第2章を選べるページに移ります。

   ここではとりあえず第1章を選んでみます。

ヨルシカ「幻燈」 スマホ フロントページ

   次に、横にスクロールして聴きたい曲の画像をクリックします。

ヨルシカ「幻燈」 スマホ 曲選択

   ARカメラが起動するので、画集を開いて同じページを撮影します。

ヨルシカ「幻燈」 スマホ ARカメラ

   画面上に絵が立ち上がるので、それをタップします。

ヨルシカ「幻燈」 スマホ ARカメラ

   すると音楽プレーヤーが開きます。

ヨルシカ「幻燈」 スマホ 音楽スタート

   シンプルなアニメーションが始まり音楽が鳴り出します。


   なお、画集の表紙を撮影することで全曲のプレイリストを出すこともできます。

ヨルシカ「幻燈」全曲プレイリスト

   僕はこのページのショートカットを作成してスマホのホーム画面に置いてます。 

   こうすれば画集がなくてもいつでもスマホで音楽を再生できます。(ただよくエラーになりますが)


「幻燈」はレコードに針を落とせたのか

   以上のように、「幻燈」ではスマホAR機能を用いて音楽を聴きます。

   正直、けっこう面倒くさいです。


「幻燈」の序文には「レコードに針を落とす」「音楽メディアの進化の歴史は少しずつ手間を省くことと共にある」「しかし、データには一つの物として存在する、という当たり前かつ絶大な『唯一性』が欠けている」……と書かれています。

   ここからヨルシカが「幻燈」を作った目的の一つを推測してみると、サブスクなどで簡単に音楽を聴ける時代に、音楽を聴くことにもっと特別な時間を与えたかった、あるいはもっと音楽に没頭して聴いてもらいたかったのではないか、と思います。

   例えば、LP盤をジャケットから取り出してターンテーブルの上に乗せ、回転するレコードの上にそっと針を落とすとき。手間をかけたぶんだけ、音楽を聴く時間が特別なものとなり、流れてくる音楽により耳を澄ませます。

「幻燈」は現代版レコードのようなもの、あるいはそれを発展させたものになるはずだったのではないでしょうか。


   しかしそれは上手くいっていないように思います。


   画集をスマホで読み込んで音楽プレーヤーを立ち上げるという行為はレコードの針を落とすほど音楽に特別な時間を与えてくれませんでした。(僕にとっては)

   片手でスマホを操作して、もう片方の手で画集が閉じないように押さえて、ARカメラで撮影して、画面をタップして、という一連の動作がエレガントではない。

   本来ならもっとゆったりと音楽を聴きながら絵や歌詞を眺めてほしいという思いが製作者(n-bunaさん)にはあったのではないかと思います。

   でもそうなってない。音楽を聴くまでが大変で、逆に音楽に没頭できませんでした。


   また、序文にあった「唯一性」「NFT」からの「この画集は比喩として存在する。私たちがプレイヤーのボタンを押す指は、例えば、絵にも置き換えられる。」という話がよくわかりませんでした。わからない、というか、ピンとこない。

   この音楽はクラウドに保存されているただのデータに過ぎない。しかしそれを呼び出すための「絵」は「物」として存在し、それには唯一性がある、ということでしょうか。

   さらに一歩踏み出すなら、ページを開く。絵を撮影する。画面上の絵をタップする。そうした行為がデータに唯一性を加えている、とか?


   どうであれ「面倒くさい」以上の何かを僕は感じることができませんでした。


いっそARレコードとか

   ということで、ここまで読んでもらえればわかると思うのですが、僕の「幻燈」の評価はいまいちです。アルバムや画集としての評価ではなくて、音楽画集としての評価という意味です。


   やっぱりCDがほしかったかなー。

   2026年3月31日まで今の形でのストリーミング配信されていて、それを過ぎると、ダウンロードが可能になるようです。ただし、ダウンロード期間は同年6月末までということでたった3ヶ月しかありません。3年後のことなんて忘れてしまいそう!

   高いお金を払ったのに3年後にはただの画集になってしまうというのはちょっと悲しい。

   そもそも時間の経過とともに音楽ですらなくなるというのに、「唯一性」もなにもないんじゃ……。


   で、どういうのだったらよかったかなーと考えてみたのですが、画集のサイズがレコードとほぼ同じなので、いっそ画集にレコードとCDを同梱すればよかったのではないかと思います。

   そしてLP盤をスマホのAR機能で読み込むと、アニメーションが現れる。

   レコードが回り音楽が流れている間は、画面上のレコードの上に人が踊ったり楽器を演奏しているアニメーションが見られる。


   レコード+ARというアナログでデジタルな組み合わせが面白いし、音楽を聴く時間を特別なものにしてくれるんじゃないかなーと思いました。

   誰かやってくれないかな?



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