【感想】徳永英明「WE ALL」|VOCALISTシリーズヒット後の不安と期待

 「WE ALL」は徳永英明の15枚目のオリジナルアルバムです。

   2009年5月に発売されました。


WE ALLの前

   オリジナルアルバムとしては前作「MY LIFE」から5年の期間が空いており、この間にカバーアルバムの「VOCALIST」シリーズが3枚発売され空前絶後の大ヒットとなりました。

   そう、「WE ALL」はカバーアルバムの大ヒット後、初のオリジナルアルバムだったのです。


   カバーアルバムが売れたのにオリジナルアルバムが惨敗でしたなんてことがあったら、シンガー・ソングライター徳永英明の沽券に関わります。ファンとしても心配です。

   しかも前作の「MY LIFE」は(個人的には)微妙な出来でしたし、少し前に発売して高評価だったシングル曲の「happiness」「抱きしめてあげる」「愛が哀しいから」は「SINGELS BEST」に取られてしまって本作には未収録ですし、とにかく不安材料が多い!

    一方で先行シングルの「砂時計」はすごく良くて「こういうのを待っていた!」という出来栄えでした。

   そんなわけで、不安と期待が入り混じったかなりドキドキな状態で発売を待ったのを覚えています。

   どうなる!?WE ALL!!

徳永英明「WE ALL」

めっちゃ名盤でした

   結果的には手に取って1回聴いただけですぐにわかる名盤でした。

   発売前の心配は徳永さんの歌声を聴いらたらすぐに吹き飛びました。


   僕の感想を書く前にwikiで調べたデータを載せておきます。

   まずオリジナル・アルバムとしては『Revolution』以来、約18年ぶりにオリコン週間アルバムチャートで1位を獲得しています。


   そして本作品の1位獲得により、徳永さんは矢沢永吉さん、長渕剛さんに続いて、3つの西暦10年代連続でオリジナル・アルバム首位を獲得した3人目の男性ソロアーティストとなったそうです。(1980年代:『BIRDS』、1990年代:『JUSTICE』、『Revolution』)

   なお、この功績は1980年代にデビューした男性ソロアーティストでは初だそうです。


   なんとオリコン週間1位だったんですねー。この頃はもうチャートには興味がなくなっていたので知りませんでした。っていうか今になって知りました(^_^;)

   さらに「3つの西暦10年代連続でオリジナル・アルバム首位」という連続記録付き。

   シンガーソングライターとして絶好調だったのが数字からもうかがえます。


アルバムの感想

「WE ALL」の特徴を3つあげるとしたら、

「パッと聴いて良い曲が多い」

「昭和テイストが良い感じ」

「キラキラした曲が多い」

   です。


   1つ目の「パッと聴いて良い曲が多い」について。

   これは①「ことば」、③「砂時計」、⑧「風と空と海と」、⑬「WE ALL」などです。

   もうイントロが流れた時点でこれいいなって。

   特に⑬は出だしのエバーグリーンな空気感だけでもう心を持っていかれてしまいます。


   2つ目の「昭和テイストが良い感じ」について。

   これは③「砂時計」、⑥「ガラスの星座」、⑩「透徹の空」などです。


   このちょっとレトロな感じが逆に新鮮でかっこいいです。

   またこれこそが徳永さんの持ち味だったのでは?と思えるほど歌声にもすごく合っています。

   僕はこれをVOCALISTシリーズで古い歌をカバーしたことで生まれた化学反応だと勝手に解釈しています。

   このレトロかっこいい感じは徳永さんの新たな魅力(=武器)だと思うのですがいかがでしょうか。


   3つ目の「キラキラした曲が多い」について。

   これは⑧「風と空と海と」、⑨「やさしいね」、⑫「愛をえらぼう」、⑬「WE ALL」などです。

   他には②「花束」、④「小さな祈り〜P.S.アイラヴユー〜」もキラキラしてるかな。ちょっとニュアンスが違う気もしますが。。。


   ⑧はタイトルからしてもうキラキラしてます。風・空・海!歌詞の途中にイルカも出てきますしね。波しぶきが輝いてます。

   ⑫はギターとベースのリズムが小気味よくて、それだけで楽しくなります。

   先行する「砂時計」の暗いイメージと一変して、アルバムは全体としては明るい曲が多くて、シチュエーションを選ばず聴きやすい仕上がりになっているのが良いと思いました。


砂時計とWE ALL

   アルバム「WE ALL」は全体的に聴きやすく徳永さんらしさもしっかり刻まれていて久しぶりの傑作(「MY LIFE」ごめんなさい)です。

   そのなかでも僕にとって圧倒的に良かったのが「砂時計」と「WE ALL」です。


「砂時計」は'00年代後半以降に発表された徳永さんの曲のなかで個人的にはベスト1です。

   何がそこまでよかったか?

   まず「別れ歌」だという点です。

   徳永さんの初期の歌は「別れ歌」が多かったと思います。なので原点回帰を感じました。

   また歌詞のなかで雨が降っていることか「レイニーブルー」を彷彿させます。

   しかもただの「レイニーブルー」のリピートではありません。

「レイニーブルー」では主人公がただ雨の街をさまよい歩いて過去に囚われたまま終わりますが、「砂時計」では別れただけでは終わりません。

「もう歩くね……ここからは」「雨上がりの木漏れ日が新しい靴に光を届けてくれているから」「出会った頃の笑顔取り戻していくね」など、雨が上がり主人公は前を向いています。

   それが「レイニーブルー」の「その後」だったり「アンサー」を歌っているようで、懐かしさのなかにも新しさを感じるのでした。


   また上でも書きましたがレトロなサウンドや歌声もいい。今の徳永さん(と言っても10年以上前になっちゃいますが)にすごく合っています。

   特にサビの高音(「もう歩くねここから」はのところ)では徳永さんのハスキーボイスの魅力が最大限に引き出されていて、めっちゃゾクゾクきます。


   最後に「WE ALL」について語ります。

   この曲を最初に聴いたのはアルバムの発売以前に行われたライブのエンディングフィルムだったと思います。(記憶違いだったらすみません)

   そのときから良い曲だな〜と思っていました。

   新しい世界、明日の世界、まだ見ぬ未来、に進んでいくようなメロディとサウンドにワクワクします。

   徳永さんの曲のなかでは貴重なアップテンポなのもいいですし、何よりタメにタメた後の大サビの解放感が最高です。

   ただできればラストのサビはもっと繰り返してほしかったです。

   最初聴いたとき、え、もう終わり?あっさりしすぎじゃね、とちょっぴり不満でした。

   徳永さんの曲は長尺なものが多いのになんでこれだけ5分で終わるんだーって、叫びたくなりましたよ。


VOCALISTの後

   ということで久しぶりのオリジナルアルバムは最高傑作で大満足でした。

   本当だったらライブも観に行きたかったのですが、この時期結婚やら転勤やらでバタバタしていてとてもライブのチケットを取るどころではなかったので残念ながらライブは観れずじまいでした。

「砂時計」と「WE ALL」を生で聴きたかったなー。


「WE ALL」というアルバムが良かった理由は「VOCALIST」を通過したことにあると思っています。

   徳永さんが他の歌手の歌をカバーしたことで歌の表現力が広がり、そのことが作詞作曲にも良い影響を与えたんじゃないかと勝手に考えています。

   なので「VOCALIST」を出したことは、ライブチケットがSOLD OUTになったりCDが大ヒットした以外にも、大きな意味があったんですよ!

   ……って誰に向かって言ってるんだろ(^_^;)


   そんなわけでVOCALISTの後に発売されたアルバムはどれも傑作ばかりです。

   次のアルバムは'10年代に発売された「STATMENT」になります。

   これも「WE ALL」とはまた違った魅力が詰まっています。


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