nano.RIPEの4年ぶりのニューアルバムを繰り返し聴いています。
今作について公式のコメントには「“nano.RIPEらしさ”に立ち戻りつつも、デビュー12周年を迎え成長した今のnano.RIPEの音楽を届けるアルバム」と書かれています。
nano.RIPEらしさってなんだろうと考えながら最近のアルバムをふりかえってみると、5作目の「スペースエコー」はnano.RIPEのダークな面を突き詰めた作品だったと思います。
その次の「ピッパラの樹の下で」は前作から少しゆり戻って陰陽を混ぜ合わせた出来になっていました。
7作目である今作「不眠症のネコと夜」は陽側に全開に振り切っています。一周回って、ファーストアルバムに近い印象を受けました。すごくいいです。
個人的にはnano.RIPEのアルバムのベスト3に入る手応です。
僕は、nano.RIPEの良さ(強み)は明るくて可愛らしい面(ハナノイロやなないろびよりなど)とハードでダークな面(スノードロップなど)のどちらも備えているところだと思っていました。
ところが明るくて前向きな今作を傑作と感じてたことから、僕にとってnano.RIPEらしさというのはハナノイロとかそっち方向にあるのかな、と思いなおしました。
そんな陽側全フリ(といっても暗い曲もありますが)の、全13曲の感想を簡単に書いていきます。
各曲の感想
1.トリックスター
毎回nano.RIPEのアルバムはキラキラ感のある明るい曲で始まりますが、この曲もその例にもれません。
「ぶっ飛ばして ふっ飛ばして かっ飛ばして」という冒頭のフレーズが景気がよくて好き。ツカミはOK!
2.ソアー
1曲目の明るさをそのまま引き継いで疾走感があります。
「プレイボール」「舞い上がれ高く」など、始まりや上向きな歌詞が多いと思っていたら「高校野球の埼玉大会中継テーマソング」だったんですね。納得。
3.つぎはぎもよう
「のんのんびより のんすとっぷ」の主題歌です。
すっかり「のんのんびよりと言えばnano.RIPE」という定位置になりましたね。
「繋いで」「晴れ模様」「笛の音と歌声は続く」など明るくて前に進んでいく歌詞が多いです。
4.ネコに日だまり
アルバムタイトルにある「ネコ」をここで回収。
4,5曲目とゆったりした曲が続きます。
5.トロット
タイトルの「トロット」は最初トトロのことなのかなと思って聴いていたのですが、特になんでもないみたいですね。
「トロット聞いて」と架空の何かに語りかける形式がいいです。優しい気持ちになります。
今作の静かな曲のなかでは一番好きな歌です。
6.クエスト
僕の中での今作一番の傑作!
イントロの時点で名曲の予感にびりびりと痺れて、ハンドクラップが始まるともうワクワクしかありません。
これ、絶対にライブだと手拍子しながらずっと飛び跳ね続けてる!
メロディもサウンドも歌詞もどれも好きです。
「ありふれた今日を越えるから 磁石も地図も要らないさ」
「不思議な匂いのする方へ」
「なんにだってなれるだろう 空になるよ 僕ら何度でも」
など夢と冒険を感じさせる歌詞にゾクゾクします。
40代のおっさんだけどね!
最後にCメロが待っているという構成も憎いです。
最高!
7.声鳴文
「クエスト」が終わった途端に「声鳴文」が始まるという構成が神がかっています。
これはもう心がやられる。
こういうハードな曲が本当にかっこいいんだから、nano.RIPEはたまらんです。
8.ペカド
ここから後半戦。
「ペカド」は星座か星の名前かなーと思ってネットで調べたらスペイン語の「罪」が引っかかりました。
たしかにそんな感じかも。「傷跡」というフレーズが印象的に使われていますし。
やや重めな曲です。
9.ロス
「ペカド」で少し重くなった後に、ここからまた3曲、アップテンポな曲が続きます。
今回は緩急の付け方がうまいですね。一本調子にならず、それでいて停止ボタンを押す隙きを与えてくれません。
10.ブローチ
「外国製のチョコレート」という冒頭のフレーズに異国の匂いが漂い、イントロのサウンドからは草原を渡る風を感じさせてくれます。
爽やかでテンポも速くて、気持ちいいです。
11.いたいけな春と空
飛び石をぴょんぴょん跳ねて進んでいくようなメロディが楽しいです。
タイトルに「春」と付くイメージ通り、どんどん前へ前へと進んでいく感じがいい。
「掴んだら離さない 欲しいものは尽きないの」という歌詞からは閉塞した時期は終わり、新しいことが始まる希望に満ちあふれています。
MVも可愛くて楽しくて良い感じです。
こんなふうに仲間と肉を囲んで踊ったり笑ったりしながら過ごせたら素敵ですよね。
12.オーブ
いたわりに満ちた歌詞にほろっと来ます。
最後のサビの歌詞が泣ける。
13.ラストチャプター
ラストにふさわしいタイトルと盛り上がりの曲!
バンドの音+ストリングスという構成がアルバムの最後を華やかに飾ってくれます。
サビの終わりの「今ならさ」のフレーズを歌うきみコさんの裏声がしゅわっと角砂糖が溶けるように響いて、その余韻のまま最後にちょっとエピローグのようにメロディが続く構成が好きです。
よし、やるぞー!って気持ちでアルバムを綴じてくれるのが最高です。
まとめ
繰り返し繰り返し聴いていますが、今作は会心の出来だと思います。
どの曲も良いのはもちろんですが、構成や流れも素晴らしい。
アルバムの最初と最後をキラキラ感のある「トリックスター」と「ラストチャプター」で挟み、ヘソになる部分にライブで盛り上がるだろう「クエスト」を置き、静かな「ネコに日だまり」と「トロット」を2曲並べるという思い切った配置をしたおかげで途中で途切れる感じをなくしています。また「ブローチ」「いたいけな春と空」という明るい疾走感のある曲を後半に続けているのも、アルバムラストに向けて気持ちを上向きにしてくれます。
最初から最後まで緩急をつけながら、ずっとワクワク感が続いている。気持ちが前向きになる。自分が今聴きたかった音楽アルバムはこれだったんだなと思いました。
そしてちょっとズレた感想かもしれませんが、今作を一言でまとめると「夢いっぱいな傑作!」です。
聴くたびに明るくて清々しい気分にさせてくれるからです。
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