大好物が大好物だった話 〜スピッツ「大好物」感想

   スピッツの新曲「大好物」、いいですね。

   毎朝、寝室の布団をたたみながら聴いてます。

   飄々と明るい曲調なので、朝にぴったりです。

   布団をたたみ終わって曲が終わる頃には寝ぼけ眼の低いテンションがニュートラルまであがっています。


   ポジとネガの絶妙なバランスが草野さんの描く物語らしいです。

   例えば「つまようじでつつくだけで 壊れちゃいいそうな部屋」(ネガ)と「連れ出してくれたのは 冬の終わり」(ポジ)。

   ネガティブな僕の世界から救い出してくれるのはいつだってポジティブな存在である君(きみ)なんですね。

   でもそんな君も完璧ではなくて「日によって違う味」(ネガ)だったりするし、いつもいつも期待通りにはいかず「期待外れ」(ネガ)だったりもする。でもそこには「未来」(ポジ)があり、「いとおしく」(ポジ)もある。

   恋をしているときの行ったり来たりな気持ちが垣間見えて、くすぐったいようなちょっと幸せな気分になります。



   また前作の「紫の夜を越えて」同様に、今作でも狙ってなのか偶然なのか、過去の作品に出てきた印象的なフレーズがいくつかちりばめられています。


   ひとつは「冬の終わり」です。

   これまでも「ヒバリのこころ」や「旅の途中」で出てきました。

「僕が君と出会ったのは 冬も終わりのことだった」(ヒバリのこころ)

「冬が終わる気がした」(旅の途中)

   草野さんは春が好きなのかな。あるいは冬を終わらせたいのか。


   もうひとつは「鬼」です。

「けもの道」に出てきます。

「細胞全部に与えられた 鬼の力を集めよう」(けもの道)

   歌詞に「鬼」が出てくる曲ってないとあんまり思うんですよね。(赤鬼と青鬼のタンゴの歌くらい?)

   他には青春生き残りゲーム」。鬼ではなくて出てくるのは「悪魔(と踊る)」ですが、金棒を振り回してる(壊しまくってる)ので鬼のイメージがあります。

   草野さんは節分が好きなのかな。


「大好物」という曲のタイトルにちなんで草野さんのお気に入りのフレーズを集めたのかもしれませんね。(違う)



   それにしても、サビの「君の大好きなものなら 僕も多分明日には好き」という歌詞は良いですねー。

「君の好きなものは僕も好き」とストレートに言ってないところが実に草野さんらしい。

「たぶん」と保険をかけてるところとか、期限を切って具体性を持たせているのに、今日ではなくて「明日」と先延ばしていているところとか。

   あいまいで頼りないけど、真面目に人と向き合ってるときはこんな感じかなーと。

   君と同じものが好きになれたらいいけど、なんでもかんでも君といっしょとはいきませんもんね。

   あれ?なんか期待してたものと違うぞってことはよくある。でもそれも含めてなんか愛おしい。


   ああ、そういえば「大好き」「好き」「いとおしく」と素敵な感じの言葉をたくさん並べてますが、一度も「君が好き」とは言ってない。

   きっと面と向かって言うのは照れくさいんでしょうね。(ネガティブでシャイな僕らだから)

   でも「手を離さないで」とちゃんと手を握ってる。

   ネガだけど、大切なものは何かをわかっていて、ポジティブになるところはなってる。

   そんなところが好きだなーと。


   とどのつまり、「大好物」の世界観が大好物だ、というお話。


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