12月前半のNHK-FM「ディスカバー・クイーン」は名作「The Game」の全曲解説でした。
イケボの西脇辰弥さんが今回もマニアックで楽しい解説をたっぷり聞かせてくれました。
第35, 36回 クイーンズ・クロニクル~ザ・ゲーム
【放送日】 12月5, 12日
【DJ】サンプラザ中野くん, 西脇辰弥
「The Game」は1980年6月に発売され全英全米1位、日本5位になった大ヒットアルバムです。
僕も何度もリピートしてい聴いている好きなアルバムです。
今作の解説のポイントは「シンセを使っているからと言って全てがシンセだと思うな」でしょうか。
また番組のなかで西脇さんがクイーンのシンセサイザーについて「1stアルバムを聴いた評論家がシンセサイザーをうまく使っていると勘違いして書いたのにブライアンが激怒して、2ndアルバムからはノー・シンセと書くようになった」と話してました。
それではA面から順にみていきます。
① Play The Game:
- 聴きどころは「イントロの効果音」「めくるめくテンションコード」
- 初めてシンセサイザーを使った曲
- 効果音は3つの部分に分かれる。冒頭の高音、後半のピューンはシンセと思われるが、壊れるような音はロジャーのエフェクトシンバルを逆再生してかつ再生速度をだんだん落としていっている
→ 実はシンセ以外の音も使われている
- 間奏のぴょーんという音は電子ドラムの音なのではないか
- サビはGマイナーセブンスナインスイレブン
② Dragon Attack:
- 聴きどころは「ジョンのベース」「ロジャーが疲れると言っている」
- ジャムセッションっぽい、即興的 → クイーンとしては珍しい
- ロジャーがハイハットをずっと叩いていているので疲れると言っていた(片手16ビート)
- 片手16ビートは「緊迫感」が生まれる →苦労は報われる
③ Another One Bites The Dust:
- この曲の元ネタになったであろう曲がシックの「Good Times」(ベースラインやリズムなど)。その録音の現場にジョンがいたという話がある
- この曲はキーが変。EマイナーのようにもFマイナーのようにも聞こえる。またフレディの声がかわいい。
→ 再生速度が違う。0.97倍にするとEマイナーになる。ライブではEマイナーで演奏している - 効果音だらけ
- フレディのボーカルの前の迫るような音は「ピアノ逆再生+フランジャーエフェクト」(ジョンがピアノを弾いている)
- ロジャーのシンバルロールの音に、うねるエフェクトをMAXでかけている
→ シンセを導入したにもかかわらず身の回りの様々な音を活用している
次の2つの曲には共通点がある。両曲ともボーカルにショートディレイがかかっている
④ Need Your Loving Tonight:
- ジョンらしい人懐っこい歌
- ボーカルにショートディレイがかかっている
- 1950年代のロカビリーに使われていた手法
- ボーカルに残響がかかっているときはギターにも同じように残響処理されているというのがこのときのお約束
⑤ Crazy Little Thing Called Love:
- 大ヒット曲
- 前曲と同じくボーカルにショートディレイがかかっている
続いてB面です。
⑥ Rock It :
- 聴きどころは「ロジャーに負けじとハイトーンを出すフレディ」と「露骨に導入したシンセサイザー」
- 前半バラード:フレディ、後半ロック:ロジャー
- この時点でのフレディの最高音C#が使われている
→ お互いが切磋琢磨して高音を出し合ったのではないか - マックが共同プロデューサー。ジョルジオ・モロダー→マック→クイーンの流れ。
- マックがRock itのシンセサイザー部分を作った?
→ シンセ音がRock itの空気を作っている!
⑦ Don't Try Suicide:
- 聴きどころは「3連グルーブ」と「変態不協和音コーラス」
- ショートディレイが冒頭にかかっているため、昔のロカビリーの雰囲気が出ている
- クリーンなギターはザ・ポリスの雰囲気がある
- 歌詞の内容の割にはノーテンキ
⑧ Sail Away Sweet Sister:
- 聴きどころは2題目とエンディングのジョンのアプローチ
- 2番のAメロのット、ット、ットという裏のベース。バラードでこれをする発想力が面白い。
- エンディングはベースがけっこう遊んでいる。ジョンが動くとピアノの意味が変わってくる。自由自在にあの部分を支配している
⑨ Coming Soon:
- エンディングの和音がメジャーシックス
- ビートルズが使うようになって流行ったが、当時はもう使われなくなっていた。珍しい終わり方
- コーラスの使い方がELOっぽい
- 80年代っぽい軽妙さだがドラムサウンドだけは譲らない。ドライじゃないつくり
⑩ Save Me:
- 聴きどころは「ブライアンが弾いているきれいなピアノ」(聞き間違いかも)と「エモーションなフレディのボーカル」
- 背景に溶け込ませるようなシンセ
- ブライアンのピアノが現代に通じるようなポップス的なものに変化している。
→クイーンが時代に折り合いをつけ始めている - この時期、フラッシュ・ゴードンのサントラを同時進行で録っていた。サントラは悲しいとき、楽しいときの音楽はこういうものという共通認識を自分のセンスにとりこんでいかないといけない。その影響で時代性が出始めたのではないか
- ライブでは多彩な音をサポートメンバーなしで楽器をうまく回してやりきっている。例えば、2番のサビでスタッフからギターを受け取って2番からギターを弾いている、など
→クイーンはあきらめない!
以上です。
放送が始まる前は、「The Game」は初めてシンセサイザーを使った作品ということで、そこに焦点を当てた解説になるかと思ったのですが、シンセサイザー以外にもポイントはいっぱいあったんですね。おもしろかったです。
番組の最後に「このアルバムで名実共に1位になった。これからどんな変貌をとげていくのか」と西脇さんが語っていました。
次回のクイーンズ・クロニクルはなにかと曰く付きの「ホット・スペース」です!
あら、フラッシュ・ゴードン飛ばされちゃいましたね(^_^;)
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