スピッツ「エスペランサ」感想|ちぃものの余韻にひたりながら

 「エスペランサ」はスピッツの14thアルバム「小さな生き物」の14曲目に収録されています。

   デラックスエディション盤のボーナストラックのためサブスクでは配信されていません。

   初めて聴いたとき冒頭の「カモメにだって悩みはあって」というちょっと物憂げな一節が耳に残りました。

   その後に続く歌詞も物憂げだし、メロディもほぼAメロだけの構成だし、全体的にアンニュイというか気だるい。

   まるでカモメが鉛色の海の上を低空飛行している姿を記録した古いフィルムを延々と見せられているようです。

   だからダメというのではなく、どちらかというと、他にないその独特の雰囲気が良いです。


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   この記事を書くにあたりタイトルの「エスペランサ」について初めて調べてみました。(遅っ!)

   スペイン語で「希望」を意味するそうです。


   歌詞を全部眺めてみてもどのへんが希望なのかちょっとわかりづらいですが、カモメにだって悩みがあることや(悩んでるのは君だけじゃないよ!)、無理のない程度に話してみようという気楽さ(敷居は低めだよ!)や、ガラスの玉は割れそうで割れないこと(ぎりぎりOKだよ!)が、そこはかとなく希望感がなくもない感じがします。

   メロディも気だるいですが悲しくはなく、曇天だけど雨は降ってない、みたいな印象ですし。

   なんというか、ギラついた強烈な太陽の光よりも、ガラス玉のなかで揺らめいている淡い光の方がいい、と思わせてくれる雰囲気があります。

   それがある意味、根暗な僕(ら)の「希望」なのかもしれません。


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「エスペランサ」はアルバム「小さな生き物」のなかでは「僕はきっと旅に出る」の次に収録されていてアルバムのラストナンバーになります。


   アルバムという一つの映画が「僕はきっと旅に出る」でエンディングを迎えて、でもあとちょっと余韻に浸っていたいという気分のときに、「ああ、まだ『エスペランサ』が残っていたか」と思うことがあります。

   本編よりも決して目立つことなく、本編のイメージを壊すこともなく、良い感じで本編の余韻を引き継いで、エピローグ付きのエンドロールが始まる。「エスペランサ」はそんな歌です。

「エスペランサ」は無くても困らないけど有ったほうが嬉しいという、実にボーナストラックらしいボーナストラックだと思います。

   地味だけどいい仕事をしています。

   なんだかスピッツっぽいですね。(と書くと失礼やろか)


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