aikoのオリジナルアルバムを久しぶりに買って聴いてます。
買ったのは3月3日に発売した14枚目のアルバム「どうしたって伝えられないから」です。
15年のブランクを埋める
いま僕は42歳です。20代前半の多感な時期をaikoの「花火」「カブトムシ」「ボーイフレンド」を聴いて過ごしました。
同じ年代の方には「桜の木の下」と「夏服」のCDは家にある、という人は多いのではないでしょうか?
この頃に一度ライブを観に行ったこともあります。
ただ、そのあと少しずつaikoを聴かなくなって2006年発売の「彼女」を最後にアルバムを買うのをやめてしまいました。
それから15年です。なんと長いブランク!
それなのにどうして急にアルバムを買ったのかというと、乙女心を歌から学びたくなったから……ではなくて、去年の秋に買ったベストアルバム「aikoの詩」がすごく良くてよく聴いているのに、中古だったので申し訳なかったからです。
中古で買ったお詫びとお礼というのも変ですが、まあそんな気分で今回発売された新作を購入したのでした。
なぜaikoから離れたのか
かなり長いあいだaikoから離れていたわけですが、なぜ離れてしまったのか?
1つ目の理由は、恋愛観の違いです。
というと、なんだ偉そうに!とお叱りを受けそうですが、そんなたいそうなものではなくて、かなり情けない話なのですが、僕はモテなかったし女性と付き合ったこともなかったので、惚れた別れたの歌詞、しかも女性心理での、というのがピンとこなくなり、どんどん興味をなくしていったのでした。
2つ目の理由は、音楽性の違いです。
というと、なんだ偉そうに!とお叱りを受けそうですが、そんなたいそうなものではなくて、単純に僕がロックやクラブミュージックに傾倒していったからです。
'00年代は、家では洋楽のごっついロックを聴いて、週末は夜から朝まで踊り明かしているような時期だったので、ポップなものは全般的に敬遠していました。
そんなわけで、'00年代後半からおよそ15年間はaikoをほとんど聴かずに過ごしました。
しかしこの間に僕は二十代後半から四十代へと歳も取り、彼女ができて結婚もして、ロックだけでなくジャズ・フュージョンも聴くようになって音楽の幅が広がりました。
今あらためてaikoを聴くと、若い頃には見えなかったaikoが見えるようになりました。
aikoはaikoという凄さ
で、新作「どうしたって伝えられないから」です。
何回もアルバム全体をリピートして聴いて感じたことを書き綴っていきます。
まずは声の変わらなさです。
これはベストアルバム「aikoの詩」を聴いたときも思ったのですが、昔と声質が変わってません。
「aikoの詩」はシングルを年代順でなく収録しているのですが、声だけではどの曲が新しいのか古いのかわかりません。
「どうしたって伝えられないから」も同様です。aikoをよく聴いていた'00年代から十数年も時が流れたとは思えない。このお人、年を取らないのか、と思ってしまいます。
次にアレンジの素晴らしさです。
自分がaikoから離れたときはロックに傾倒していました。
しかしいま聴くと、ジャズやフュージョン寄り(ジャンル詳しくないからズレてたらごめんなさい)のアレンジがロックとは別の良さがあります。
端的に言って、ピアノやホーンの音が気持ちいいです。
例えば、②「メロンソーダ」などです。
それから歌唱力の凄さです。
aiko、歌うまーーーって。
そりゃプロなのだから上手くて当たり前なのですが(^_^;)
aikoは歌唱力で評価されるシンガーという印象を持っていなかったのですが、あらためて聴くと声の伸びとリズム感がすごいな〜と。
言葉がリズムと遊んでいるというか、口から出た言葉がそのままメロディとリズムになっているというか。
ようは、聴いていていて、めっちゃ楽しいなと感じたのでした。
特にそう思ったのは③「シャワーとコンセント」、⑤「ハニーメモリー」、⑦「磁石」です。
最後に歌詞の凄さです。
かつてaikoの歌詞は女性視点であり男性の自分には合わず共感できないと感じたときもありました。
しかし今は僕も年を取り経験を積み包容力も増し、違う視点のaikoの歌詞にも共感できるようになった……かというと、そんなこともなく、やっぱり自分の好きな歌詞とはちょっと違うなぁと感じるところは変わりません。
その代わり、実生活が恋愛から遠のいたので、歌詞を客観的に、あるいは一つの物語として見られるようになりました。
そうして少し離れて眺めてみると、aikoの歌詞ってどれもaikoだな、ということに気づきました。
aikoは誰かに向かって歌っているのではなくて、aikoはaikoのことを歌っている。
例えば、一人称が「僕」で書かれている「ハニーメモリー」にしても、男主人公の視点を借りてaikoを描く作りになっています。(ニックの一人称で語られている「グレート・ギャツビー」の本当の主人公がギャツビーのように)
つまりアルバムのどこを切り取ってもaiko。
そりゃ、男の僕が共感できるはずもない。女性でも難しいかもしれない。aikoかaikoに近い子でないと共感できんわっていう話です。
ではなぜ僕はaikoの歌を聴くのか?
aikoの歌を聴いてaikoというキャラクターを見るためです。
aikoが何をして何を見て何を感じて何に泣いて何に笑うのか。
それを知るためにaikoの歌を聴く。aikoというキャラを見るのが面白くて興味深いのです。
そしてそういう聴き方ができるのは、aikoが「君たちの歌」でも「君の歌」でもなく徹底して「私(aiko)の歌」を作り続けているからです。
aikoはどこまで行ってもaikoである。
それはすげーなーっと思うのでした。
おすすめ曲
シングル曲の⑤「ハニーメモリー」⑥「青空」、アルバムのリードトラックの⑦「磁石」ももちろんいいですが、②「メロンソーダ」、⑨「片思い」、⑬「いつもいる」も好きです。
「メロンソーダ」の中に出てくる「メロンソーダがビールになって ハンバーガーはハンバーガーのまま あぁこういうの何て言うんだっけ」という歌詞が好きです。時の流れを感じつつ、ほんわりとした幸せがにじみ出てて良いです。
「片思い」は小さくて可愛い部屋をのぞいたような雰囲気が好き。
「いつもいる」はアルバムラストの曲です。メロディが美しい。ストリングスの間奏からサビの「運命の糸が……」へのじわじわと上がっていく展開が胸に刺さります。
オンラインライブ「Love Like Rock vol.9~別枠ちゃん~」
初回特典盤には無観客オンラインライブ映像を収録したBlu-rayが付いてきます。
aikoがぴょんぴょん跳ねて歌っているのが見ていて楽しい。
ああ、そういえば昔一度行ったライブもこんな感じだったなと思い出して嬉しくなりました。
二十年近く前のaikoのライブに参加したその帰りに、僕は「元気をもらった」と思いました。
普段は「音楽から元気をもらう」という表現が嫌いなのに(何故なら僕らはもらうのではなくて勝手に元気になるものだと考えているから)、そのときはすごく素直に元気をもらったと感じました。
きっとすごくすごくライブが楽しかったのだと思います。自分の主義とか思想を忘れるくらいに。
むすび
以上、aikoのオリジナルアルバム「どうしたって伝えられないから」の感想でした。
けっこう脱線してしまいしたが(^_^;)
aikoの歌はaikoというキャラに自分を重ねられないと良さが半減します。
恋愛の嵐のど真ん中にいた若い頃は、自分の恋やその状況、自分の恋の気持ちに合ってない歌は聞けませんでした。aikoから遠ざかった要因の一つがそれです。
しかし年を取って恋愛が世界の中心でなくなると、そんなにガチガチに恋愛にしばられることなく歌を聴けるようになりました。
一周回って今度はaikoというキャラに自分を重ねるのではなく、aikoというキャラを見て楽しむことができるようになりました。
人生は一度aikoから離れてまたaikoに戻ってくる。
……なーんてことを思いました。
まあ、むかし好きだったアーティストを今また聴いたら、違う良さが発見できるかもね、というお話。
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