徳永英明「愛をください」感想 ~レイヴに明け暮れた'00年代のPOPS

 「愛をください」は2003年3月に発売された徳永英明の13枚目のオリジナルアルバムです。


   発売当時、僕はすでに社会人になっていて、親会社のある横浜に出向していました。

   その頃、よく聴いていた音楽はポップスでもロックでもなく、テクノ/トランスでした。

   夏になると一人用テントを登山リュックに詰めてレイヴに行って自然のなかで踊ったり、都会のクラブに行って夜通し踊ってへろへろになって朝を迎えたり。

   すっかりトランスに心酔して心は徳永英明から離れていました。

   徳永さんの情報もチェックしていなかったので新譜が出たことも知りませんでした。

   あるとき、たまたま入ったCD屋さんの邦楽コーナーで「徳永英明ニューアルバム!!」と書かれているのをみかけたものの、「さすがに今の僕には徳永英明はちょっと……」とあまり心動かされなかったのですが……

   手に取ったジャケットを見ると、なんだか妙にスピリチュアルというかトランス的な雰囲気が漂っているではありませんか。

   おおお!こ、これはー!

   今('03年)の自分にぴったりではないですか!

   というか、何があった徳永さん!??笑

徳永英明「愛をください」


   実際に聴いてみると、全10曲のうち最後の2曲を除く8曲はこれまでの徳永英明にないサウンドで、ジャケットのイメージ通り、トランスめいたエレクトロニカ色の強い仕上がりになっていました。


レイヴ時代の徳永英明

   徳永さんがレイヴをしてたってわけではなくて、僕がレイヴによく行ってたって話なんですけどね(^_^;)

   ちなみにレイヴというのは、ダンスミュージックを一晩中屋外で流して踊り続ける音楽イベントのことです。


   僕が’00年代に足を運んでいたのはトランスのパーティです。

   多くのパーティではフロアが2つあって、メインフロアではトランスが流れて観客はがんがん踊っていて、もう一つのチルアウトフロアでは静かなゆったりとした曲が流れて、みんなぐたーっと寝ていました。

  夜通し踊って疲れたらチルアウトして……体力を限界まで使い果たしてレイヴ会場で過ごすのがすごく好きでした。(今思えば体力あったなー)


   そのチルアウト系の音楽に「愛をください」のサウンドは近いものがあります。

   エレクトロニカ、アンビエントミュージックというジャンルなのかな。

   特に③「大宇宙」⑤「せらぴすと」⑦「幾千の時を経て」⑧「そら 花」がそうです。

   家でもクラブ系のミュージックをよく聴いていた時期に、まさかバラードシンガーの徳永英明がトランス/チルアウト寄りのアルバムを出してくるなんて思ってもおらず、趣味が一致してくれた(?)ことが嬉しいやらなんやら。

   当時は、深夜にチルアウト代わりに「愛をください」のCDをかけて布団に入り、そのまま眠りにつく、ということをよくしていました。(心地いいんだなー)


   ということで、「愛をください」のアルバムは個人的にレイヴの思い出と重なり、トランス/チルアウトのイメージが強いです。


   特典でもらった卓上カレンダーも、トランスっぽい雰囲気が出てます。これ、すごく好きで2003年を過ぎてからもずっと飾っていました。

   仙人様みたいな徳永さんがかっこいいっす。

徳永英明「愛をください」特典卓上カレンダー


圧倒的すぎる「愛をください」と「幾千の時を経て」

   アルバムのなかで特に好きなのは①「愛をください」と⑦「幾千の時を経て」です。

   ライブで盛り上がる②「君をつれて」、⑥「ONENESS」やヒーリングミュージックのような③「大宇宙」⑤「せらぴすと」ももちろん好きなのですが、①⑦が圧倒的にいい!


愛をください

「愛をください」は歌詞が力強くて好きです。

(歌詞に負けないくらいに冒頭で力強くかき鳴らされるギターの音もたまらん!)


「この胸に僕は僕の生き方をいま決めたよ
   もうどんな時も負けないような 愛をください」

   というサビの歌詞に何度励まされたことか。


「いま決めたよ」の「今」がまたいいです。

   いまこの瞬間に生きているという生の高揚や充足が感じられます。

   最後の畳み込むようなサビの展開も熱い!


幾千の時を経て

   ぶっちゃけ、この曲ばかりリピートしてました。

   ノイズが入って粒子の粗い感じや、浮遊感のあるサウンドはエレクトロニカとして聴いても秀逸で、そこに徳永さんの透明感のある声が乗っているのがまた素敵でした。

   目を閉じると静かな宇宙空間を漂っているようで、いい意味でよく寝れる。笑


   歌詞も素敵です。

「幾つの時代を経て生まれ変わってきても
   僕はきっと君に恋をしているはずさ…」

「幾千の時を経て出逢う星みたいに
   君と出逢ったことで僕はひかりつづけられる僕は…」

   ロマンチックだけど気負ってない自然な言葉で恋を歌っているのがいいです。


   2019年のツアーでこの歌を違うアレンジで生で聴けたのがすごく嬉しかったです。

   うおーって叫びたくなりました。


CDが割れるので注意

   最後に。

   このアルバムのCDを固定してる部分が固くて、最初に買ったCDはヒビが入ってしまいました。中心からピキッて感じで。

   ちなみにCDを取り出すときではなく、CDを戻してハメるときに割れました。CDをトレイに戻すときは要注意です。


   おかげでうちには「愛をください」だけ2枚あります。


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