sora tob sakana ラストアルバム "deep blue" 感想 〜少年時代に戻れるジュブナイルな音楽の物語

sora tob sakana 解散

   sora tob sakanaを初めて知ったのは「ささやかな祝祭」です。それから少しずつ楽曲を聴くようになり、今年に入ったころからファンになりました。
   いつかはライブに参加して”lighthouse”で手を高く上げて飛び跳ねたい!と思っていたのですが、その矢先に解散になってしまいました。えーーー。

   あまりにもファン歴が短くて、この胸のもやもやが悲しみなのか寂しさなのか何なのかもわらかない状況です。
   夏のライブツアー&9月のラストライブも行きたかったですが、ちょうど出張が続いて家を開けていた時期が長かったのと、コロナ禍ということもあり、遠征してのライブ参加は断念しました。

ラストアルバム”deep blue”

   とはいえ、解散してしまうものは仕方ないので、この夏は彼女たちの最後のアルバムを聴いて過ごしますよ!
   ということで、はい!sora tob sakanaのラストアルバム"deep blue"を手に入れました。
sora tob sakana ラストアルバム "deep blue"

   奮発して初回限定版です。CD2枚+BD2枚入り。
   "deep blue" というタイトルとジャケットの深い青色が夏にぴったりです。
sora tob sakana ラストアルバム "deep blue"

   アルバムは全11曲から構成されています。
   最初と最後に新曲が2曲入っていますが、 残り9曲はこれまで発表された楽曲を新録したもので、ベスト盤のような作りになっています。

   付属のブックレットに、メンバーとプロデューサーの照井さんとのインタビューが掲載されているのですが、それによると、収録曲は録り直す意味が大きいやつ=初期の曲を中心に選んだそうです。(個人的には「ささやかな祝祭」と「lighthouse」も入れてほしかったなぁ)

   特に「夜空を全部」は今の彼女たちが歌うと歌唱力が上がっていることもあり、原曲よりも夜の深さや星空のかがやきが感じられて、ああこれがこの歌の完成形なのかと、ちょっと震えるものがありました。もっとも原曲も拙さが歌の世界観と合っているので、それはそれで良かったと思います。
   というか、この曲、けっこう辛いですよね、キーの高さとか。ライブではよく踊りながら歌えるなぁ。

   また、後半の「New Stranger」のあとの「夜間飛行」「ribbon」という流れがすごく良くて、ここは何度もリピートして聴くことになりそうです。夜、星、空というsora tob sakanaらしいキーワードが散りばめられています。

   新録曲では他には「広告の街」がキレキレでトンガリ具合が増していてかっこよかったですし、「Brand New Blue」は後半の演奏がグッときました。

   新録曲は初期の曲のなかでも特に代表曲だったりライブの定番曲から選んだのかな。盛り上がりのはっきりとした曲が多いと思いました。
   一方、新曲は2曲とも少しクールな雰囲気ですね。

「信号」は静かななかにも決意めいたものを感じる歌です。
「untie」は輪唱のような構成で、抽象的な言葉が並べられていて、聴く人のイメージを掻き立てます。最後の言葉が「君が生きている」というところに強いメッセージを感じます。(照井さんもインタビューのなかで「最後に強い言葉で」と話している)

   ”deep blue"は実質ベスト盤のような仕上がりなので、今からsora tob sakanaを聴く人にもおすすめのアルバムです。
   まあ解散しちゃうんですけどね・・・

ジュブナイルな何か

   このブログで以前にsora tob sakanaを紹介したときにも「ジュブナイル」という言葉を無意識に使っていたし、ネット記事のなかにも「ジュブナイル」をキーワードにしてsora tob sakanaをレビューしているものを見かけました。
   今回ラストアルバムを聴いたり、付録のインタビューを読んだり、あらためてこれまでの4枚のアルバムを聴いてみて、「青春」「ノスタルジー」という単語が彼女たちの楽曲を表現するのにぴったりだと思うと同時に、それ以上に、自分にとっては彼女たちの歌を聴くとジュブナイルな何かを喚起されると感じました。

   きっと僕はsora tob sakanaのなかに少女性だけではなく、少年性もみつけていたのだと思います。
   例えば「やがて夜の魔法が解ける前に 願い事 空に描く(夜空を全部)」「さっきまであたりまえだった景色が輝いて(魔法の言葉)」「星の川をまたいで列車は走る(ribbon)」など。どの歌のなかに少年時代特有の感性が詰まっています。
   そしてそれらは、夏の草の匂いや、夜の闇の深さや、恋になる手前のうまく言えない感情といった、遠いむかしに自分が含まれていて今はもう忘れてしまった懐かしい世界を思い出させてくれます。

   彼女たちも大人になり、そうしたものは少しずつ失われていくのかもしれない。だからこのタイミングでの解散なのかもしれない。でも本当だったら、大人へと成長していくなかでの変化も楽曲として聴いてみたかったと思わなくもないです。

   解散は残念ですが、歌は消えてなくなるわけではないので、これからも、ことあるごとにアルバムを引っ張り出してジュブナイルな音楽の物語に浸ろう。
   そのときは、きっとほんの少し少年時代に戻ったような気持ちになる気がします。

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