ロックは反骨精神 ~スピッツ「ルキンフォー」感想

スピッツ「さざなみCD」

   ’19年5月5日放送のロック大陸漫遊記のなかでリスナーさんから「ロックとは何か?」という質問がありました。
   草野さんの答えは「反骨精神と独自性」でした。(ほんとはもうちょっと長めの回答でしたが)
   これは反社会的とか批判的とかということではなくて、既存のものにとらわれないこと、新しいものを創造することを指していると、僕は思います。
   オリジナリティだったり、自分の殻を壊すということだったり。

   ではスピッツの反骨精神はどういった形で体現されているか?
   僕が思う、スピッツ最大の反骨は、日本語でロックをしたこと、かわいさや弱さをロックにしたことです。それは従来のロックにはなかったものだと思うから。(かろうじてブルーハーツが近い?)

   そんなスピッツが世に出した「ルキンフォー」は、前作の「魔法のコトバ」から一変して、世間が抱くスピッツのさわやかなイメージを真っ向からぶち壊すガリガリのロックでした。
   まるで乾いた風が吹き荒れる果てない砂漠を行くようなサウンドと、前へ進むことをためらわない力強い歌詞。そして、厚いんだけど自由自在なバンド演奏。
   シングル発売当時、一つ一つの音を踏みしめて進んでいく大きな生き物のような、たくましいロックに僕はしびれました。

   歌詞もいつもと違ってネガティブ要素少な目で、前向きなものになっています。
「それじゃダマされない」
「少しずつだけど学んできたよ」
「どこまでも続くデコボコの道をずっと歩いていこう」
「めずらしい生き方でもいいよ 誰にもまねできないような」
   スピッツと言えば「ちょいネガ」(?)という固定観念をあっさり壊しており、スピッツが己自身に向けた反骨精神を感じることができます。


   それにしても、かっこいいですよね!ルキンフォー。
   特に僕は冒頭の歌詞が好きです。「それじゃダマされない ノロマなこの俺も 少しずつだけど学んできたよ まだまだ終わらない」
   この短い歌詞のなかに、主人公がこれまで歩んできた道のりと、これから続く長い旅を読み取ることができます。
   そしてAメロに続いて「デコボコの道を歩いていこう」と歌うサビを聴くと、拳にグッと力が入ります。

    そんなワイルドな「ルキンフォー」ですが、最後の最後に「君に届きそうな 気がしてる」と歌っています。届いた!とは言い切らないあたりに、いつもの草野さんが見え隠れしていて、かわいいなと思うのでした。