今のアジカン ~ASIAN KUNG-FU GENERATION「ホームタウン」感想

「ホームタウン」はアジアンカンフージェネレーション(以下、アジカン)が2018年12月に発売した9枚目のオリジナルアルバムです。

   前作では真っ白だったジャケットが、今作では中村佑介さんのイラストに戻っています。その変化のとおり、前作「Wonder Future」に比べて今作「ホームタウン」は全体的にカラフルでにぎやかな印象です。
   ハード過ぎる曲こそありませんが、ミディアムテンポから少し速めの曲まで揃っていて、気持ちよくノレるアルバムだと思います。

   少し前から、今のアジカンは変わった、昔の方がよかった、というレビューがよく目に止まるようになりましたが、熱烈なファンではなくインディーズのころ(崩壊アンプリファー)から淡々と聴き続けてきた自分にしてみると、今回のアルバムが過去の作品から大きく違っているようには感じませんでした。
   ちゃんとロックしてるし、変わらずポップだし、エレキギターははっきりと存在感を示していますし。
   ⑤「荒野を歩け」の爽快なメロディ、⑥「UCLA」の後半の激しいサウンド、⑦「モータープール」の孤独に突き刺さる感覚、⑨「さようならソルジャー」のギターのぐるぐる回るようなメロディライン。どれもアジカンの良さがあふれてます。

   ただ、初期のようなセンチメンタルを誘う要素は減り、君と僕の小さな世界ではなくて、一歩引いた視点から世界を客観的に歌うようになったーー具体的には「君という花」「君の住む街へ」「ワールドアパート」のような”君”がいなくなり、「荒野を歩け」の”あの娘”や「ボーイズ&ガールズ」の”Boys & Girls”に変わったのは少し寂しく感じなくもないです。

   とはいえ、ファンを置いてけぼりにするような極端な変化ではないし、根本にあるのはギターロックというところは変わらないので、懐古的になるよりも今のアジカンを楽しんだ方がいいんじゃないかなぁ、というのが僕の気持ちです。
   ギターの音は今の方が痛快で好きですし、ミディアムテンポでパワフルに演奏するスタイルはアジカンの旨味をよく引き出しています。
   初期のカラッとした歌い方も好きですが、今のやや粘っこい歌い方も僕はいいと思いますよ。

   またとやかく言われがちな歌詞ですが、良いものもいっぱいあります。
   例えば、①「クロックワーク」で別れた恋人に再会したいと願う気持ちを時計の針の比喩で表すところ。⑨「さようならソルジャー」で君との出会いに感じた運命を水鳥が羽をたたんで風を待っている姿に比喩するところ。どれもロマンチックで綺麗です。

   今作は、ドライブにもランニングにも合ってるし、ライブでも盛り上がれそうだし、とても気に入りました。
   おすすめは①「クロックワーク」、⑤「荒野を歩け」、⑥「UCLA」、⑦「モータープール」、⑨「さようならソルジャー」です。
ASIAN KUNG-FU GENERATION「ホームタウン」(Amazon)

   ところで、レビューを見ていると「昔のアジカン」として引き合いに出されているアルバムは「ワールドワールドワールド」と「サーフブンガクカマクラ」が多かったです。
   自分のなかではアジカンと言えば「君繋ファイブエム」だったので、ちょっと意外でした。

   町田の小さなCDショップでインディーズアルバムの「崩壊アンプリファー」がPOP付きで紹介されていて、試聴してすぐに気に入って購入したのがアジカンを知ったきっかけでした。
   それから1st「君繋ファイブエム」、2nd「ソルファ」と、どっぷりハマり、この3作は聴きこみました。
   一度だけ武道館ライブにも行ったことがあります。

「サーフブンガクカマクラ」は発売したタイミングが悪かったのもありほとんど聴いていないので、時間を作ってあらためて聴いてみようと思います。