これで最後なのが寂しい ~チャットモンチー「誕生」感想

   6月に発売されたチャットモンチーのラストアルバム「誕生」を2週間聴きましたので感想を書きます。
チャットモンチー「誕生」

   今回のアルバムの特長は何といっても「打ち込み」です。
   アルバムを最初聴いたとき「意外と打ち込み、似合ってるなぁ」と思ったのですが、2週間聴いてもやっぱりその感想は変わりませんでした。
   ボーカルの橋本絵莉子さんのちょっとキュートな声と、宇宙人のおもちゃのようなキーンと鳴るエレクトロニカな音は相性がいいです。狙いすぎず、ちょうどいい感じでかわいらしい。
   またチャットモンチーはシンプルなギターサウンドが長所だと思っていたのですがそれと同時にちょっと物足りなさも感じていました。打ち込みという未開の地の音を取り入れることで音の世界がこれまでよりも明らかに広がっています。

   今回は思いっきり打ち込み寄りにふったので、次はもう一回バンドサウンド寄りにふり直して、バンドサウンドと打ち込み系のちょうど中間くらいを狙ったフルアルバムを聴きたい!と思ったのですが、これで最後なんですね。残念です。

   んー、やっぱり、一回はライブに行っておけばよかったなぁ。悔しい。

   以下、簡単な各曲の感想です。


1. CHATMONCHY MECHA
   インスト。「ああ、打ち込みなんだなぁ」って印象付ける一曲。くどくない程度のピコピコ感がいい。つかみはOKみたいな。

2. たったさっきから3000年までの話
「北朝鮮とアメリカの狭間で~」と時事ネタあり。個人的には時事ネタが歌の中に出てくるのはちょっと苦手。後半の「wow wow oh~」のあたりからの上昇感が好き。打ち込みの音をうまく消化/昇華してる。音が宇宙に飛んでってる感じ。

3. The Key
   キラキラとした雰囲気の曲が多いなかで、この曲だけ妙にヘビー。ギターもベースも重め。「嫌いな人ができる日はあなたのはじまり」という歌詞が心に引っかかる。

4. クッキング・ララ
   そんな重めの3曲目の次にふわっと可愛い曲を配置するのが憎らしい。「クッキンラララ」というサビがキャッチ―。最後に皿を洗うオチがあるのがナイス。

5. 裸足の街のスター
「風が吹いたメロディ」と最後に歌った後に流れるアウトロのメロディが好き。たゆたう感じがいい。ハープっぽい音なんだけど、ハープじゃないし、なんだろ。歌詞カードに書かれている楽器一覧を見たら「メロディカ」って書かれているけど、これかな。「メロディカ」を調べてみたら「ピアニカ」のことみたいだけど。んー、どうだろ。

6. 砂鉄
   元メンバーの高橋久美子さんの作詞。「僕は僕の真似なんてしなくても最初で最後の僕だ」という言葉が素敵。後半からラストにかけてサウンドもグングンと力強く上がっていくのもいい。

7. びろうど
   ものっすごく、ラスト感のある一曲。シンプルだけど広がりがあり、じんわりとくる。ボーカルの橋本絵莉子さんの4歳の息子さんがコーラスで参加している。ラララ♪これはずるい、そしてかわいい。打ち込みだのギターサウンドだの言ってたのに、最後に全部4歳児の歌声に持っていかれた感じ。
   歌詞もいい。「生きていくのよこれからも 36度のぬくもりで ほら、青い血が見えるでしょ あなたを抱きしめる命の糸だよ」ーー優しくてそれでいて力があふれている。